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 「今のハリウッドは、大した事無いわねぇ。」

 桐野はそういう。

 「また、そんな不特定多数にケンカを売る様な発言を。」

 「いいじゃない。金はいっぱいかけているけど、あれじゃあ無駄だと思うわけ。」

 「何でですか?」

 「最近のハリウッドの大作って、何やっているか分からないじゃない。」

 「それは、内容が難しいって事ですか?」

 「違うわよ。簡単言ってしまえば説明が下手って事。」

 「説明ですか?それは解説を入れろって事ですか?」

 「そういう事じゃないのよ。今のハリウッド映画の大作って、単調なアップ画像をダラダラつなぎ合わせているのが多いのよ。」

 「別にいいじゃないですか。迫力が出て。」

 「そこがどんな場所なのか、人物の位置関係とかが分からない状態でダラダラアップが続いて、アクションが始まるのよ。観てる方からすれば何か暴れているらしいという記号しか分からない状態なのよ。」

 「ああ、最近のアクションものに多いですよね。何か、激しい戦いらしいけど、何をしているか良く分からないまま延々と暴力シーンが続くって。」

 「アップだけじゃ無く、引いた絵で、人物の位置関係を説明したり、そこにどんなアイテムがあるのかとかの説明をすれば、もっとわかり易くなるはずなのに、正面アップをダラダラとか駄目だと思うのよ。」

 「まあ、そんなのばっかりじゃ無いですけど、最近はかなり、そんなのが増えてますよね。・・・・・あ。」

 美由の目に校舎の入り口前で近藤遙人にお姫様だっこされている朋の姿が映った。

 「ねぇえ。あそこで近藤先生にお姫様だっこされてるのって、ちびっ子じゃない?」

 桐野が言っている『ちびっ子』というのは朋の事だ。

 「そうですね。何かあったのでしょうか?」

 美由は朋を見る。不健康そうなわけでも、元気が無いわけでもなさそうなのだが、何か覇気が無い。まるで、徹夜に慣れてない人が徹夜をしたようなボーっとした感じだ。

 お姫様だっこをしているイケメン教師の横には、まるで子猫を愛くるしく見つめているかの様な顔をした須王寺月見がいた。彼女は軒下に転がる開っきぱなしの傘を月見は拾い、それを閉じて、近藤を追う。

 「そりゃ、何か無くちゃ、お姫様だっこなんてされないでしょ。桜間さんだってそうだったんでしょ?」

 「はい?何がですか?」

 「ほら、持久走大会の時に、ちびっ子をお姫様だっこしたでしょ?」

 「し、してません。倒れている彼女を起こしただけです。」

 「本当かな?ま、どちらにせよ、あの子は女の子の憧れであるお姫様だっこを、短い期間の中で二回も、それも、素敵なおねぇえ様とおにい様にされるなって。」

 「だから、してませんし、私はおねぇえ様と呼ばれる様な人でもありません。」


 美由は傘をたたみ、自分の下履きを靴だなから取り出し、靴を履き替えながら考える。

 『あの近藤先生と、月見さんを朋ちゃんに接触させるのは、それぞれ、別の意味でまずい。近藤先生は女子高生に節操の無い『たらし』っぽいし、月見さんは退魔師だし。昨日の全校集会で朋ちゃんを怪しんでったっぽいしなぁあ。ひとまず、あの二人を朋ちゃんから引き離さないと。でも、どこだろう?何かボーっとしてたよな。保健室?』

 「桐野さん。」

 「どうしたの?桜間さん。」

 「私、朋ちゃんが気になるので、保健室に行ってみます。」

 「ああ、私も気になるからつきあってあげよう。」

 美由は一瞬、拒否しようかとも思ったが、自分一人で行くよりは良いだろうと考え直した。

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