朝
朝になった。
今日は生憎の雨である。
美由と桐野はバスに乗り、学校へと向かっていた。
「桜間さん。そういえば、今、文科省で議論されてて高校卒業を1年早める事が出来る様にするらしいわよ。2年で高校卒業出来る様にするんだって。2014度からの導入を目指しているらしいわよ。」
「そんな、法案通ったら、書き直さないといけなくなるネタを・・・。」
「まあ、その時は、その時。」
「今でも、高校に二年間通えば大学には行ける制度がありますよね?」
「それは、高校中退扱いになるし、手続きが難しいみたいよ。」
「履歴書に高校中退と書くより、卒業と書いた方が見栄えがいいですからね。しかし、3年間でも授業内容がキツキツなのに。2年でどうやって3年分を終わらせるんですかね?」
「そこは色々な手があるでしょ。卒業だけなら最低習熟度で充分だから、大学入試を前提としなければ、余裕で大丈夫でしょ。微積も基礎的なレベルなら、そんなに難しく無いし。」
「それって、意味があるんですか?」
「さあ。国際社会に勝てる優秀な人材の育成が目的らしいけど、とても、信じられないわね。中高一貫教育の学校を今は6年だけど、5年で卒業出来るというのを学校のウリにしたいようにも見えるし。」
「中学と高校で授業内容が、かぶっている部分とか、高校レベルで教えた方が実は効率的なとかありますからね。でも、確実に落ちこぼれが出てきますよね。中高5年生の処に行って、中退したら目も充てられ無い様な・・。」
「聖エルナール学院みたいな処だったら有りだと思うんだけど、大学一直線とかの中高一貫校で5年生だとねぇえ。かなりキツイ事になるでしょうね。」
「桐野さんは高校2年で卒業って賛成ですか?」
「どっちでも、いいわねぇえ。だって、既に高校に入っていて、しかも、3年の私達には何の関係も無いもの。ただ、私は高校3年間は通いたいから、2年生高校や、5年生中高一貫校は選ばないわね。」
「私もですね。」
「そう言えば、部活とかどうするのかしらね?」
「と、言うと?」
「1年短いわけじゃん。」
「ええ。」
「大会で活躍するチャンスを1回潰すわけじゃん。しかも、一番力をつけた3年の分を」
「そうですねぇえ。まあ、そういう部活で活躍したい方は行かないのでは?」
「それも、そうか。」
「私はどちらかというと、1年とはいえ、成長の経験が無いまま、社会なり大学なりに行ける事を危惧しますね。」
「成長の経験?」
「うーんとですね。青春を謳歌するといいますか・・・。」
「まさか、桜間さんの口から、そんなクサい台詞が聞けるとは、思ってもみなかったわ。」
「・・・・。」