会議
二匹の黒猫は美由の部屋に集まった10匹近くの猫達と話していた。
彼等は、傷だらけの猫が、大きな黒猫の組織を使って呼びかけを行い、集まった面々である。
その中には桐野の猫や、最低ランクに位置づけられている二匹もいる。朋の家に近くに、捨て駒として投入された三匹である。
彼等三匹は、雄志があって来たワケでは無く、三匹を引き受けようというグループが無いため、傷だらけの猫のもとに来ただけである。
大きな黒猫のグループの二匹は、ボスの命令で来ているだけであり、それ以外の猫は、内部抗争で孤立して行き場の無い猫ばかりである。
「彼が来てくれると、楽なんですけどねぇえ。」
「ジローどん。彼とは誰ね?」
「内乱の首謀者ですよ。私の元部下で。」
「何ちか?おまんさーは正気か?」
「ええ。私自身は、別に彼に含む処はありませんし。緊急時の警戒シフトとなると、あと一人、慣れている方がいないと。」
傷だらけの猫は元々、半径2・3キロはある縄張りを3匹~6匹で24時間、監視していた。
前の傷だらけの猫の部隊は、彼と部下3匹の4匹だけであり、たまに手が足りない時によそから二匹ほどヘルプを頼んでいた。
美由はその範囲を監視するには少ない数だと感じたが、傷だらけの猫からすれば、平時であれば、これでも多いという。
少数ですむカラクリは意外と簡単で、縄張り内の移動ルートは、だいたい5つぐらいしか無く、そのルートの重要ポイントに網をかければ、だいたいの流れはつかめるという。
それに猫たちには、グループの縄張りがあり、そのグループの中には個人個人の縄張りがある。その縄張りに侵入者が入ってくれば、そこの主をやっている猫が自動的に警報を発するわけだし、情報収集を怠らなければ、よその地域からの侵入者情報を受ける事もできる。
様は警戒システムの構築と、ちゃんとした運用体勢を確立して、24時間体勢でシステムが動いていれば、少ない人数でもやっていけるのである。
ただ、これは平時の話である。
今回の様な非常事態の場合、結構な人数を割かなければならない。まず、監視のために重要になるポイントについては、常に監視する必要がある。しかも、二人以上でだ。理由としては休憩のため交代要員が必要になるのと、伝令役が必要になるかからであり、緊急事態の場合、正確な情報を素早く共有する必要があるため、伝令役というのはかなり重要なのだ。意外と定期的に何も無いという事だけを伝える定時連絡が重要で、定時に連絡が無ければ何かがあった事がわかる。
ただ、この見張りという仕事も誰でも良いというものではなく、結構な能力が必要になる。まず、事情をちゃんと説明出来なくてはならない。それに一番問題なのは伝言ゲームになる事で、伝言が伝わる度に情報が変化していく事を避ける必要がある。これには結構な経験が必要で慣れてないヤツがやると、トンデモ無い事になるのだ。
そのため、そういった仕事に慣れている内乱の首謀者が必要になるのだった。