美由の部屋で猫の集会
美由は風呂からあがり、二階の奥にある自分の部屋に戻ってくると、窓の向こうに何か大きなモノがいる事に気付く。
『何?』
今まで、あの窓を使って来訪者が来た事が何度かあったが、ウサギ主ほどでは無いにしろ、あんな大きな来訪者は知らない。
その大きなモノは窓をコツコツと叩く。
『私を呼んでる?』
「美由ちゃん。ここ開けて。」
中学生ぐらいの少女の声が聞こえてくる。
間違い無く、幽霊の声だ。
「ゆうれいさん?」
そう言って、曇りガラスの窓を開けると、そこには、大きな黒猫の上に、けだるそうまたがっている傷だらけの猫がいた。
「すいません。魔法少女様。中に入っても。」
いつもの覇気が無い、外見が傷だらけなので分かり難いが、声の調子から、かなり弱っている事がわかる。
「どうぞ。」
そう言って、大きな猫は窓から入り美由の勉強机を経由して、ベットの上に傷だらけの猫を置く。
「美由ちゃん。ジロー弱っているの助けて。」
セーラー服姿の少女はそう言う。
「どうしたんですか?」
「ちょっと、色々とあって。」
「もしかして、猫たちとの抗争で?」
「違うの。変な人達に突然襲われて・・・。」
普段は明るい幽霊が、心配な顔をしている。
「とにかく。治療をはじめます。」
美由は魔法少女に変身し、治療をはじめる。
「救済者?」
治療をしながら、そう言った。
「うん。世界の救済とか言って、私達みたいなのを不浄なものと決めつけて、殲滅しようとするの。二年前にジローと別れた時も、同じ人達じゃないけど、その人達に襲われたのがきっかけで。」
テラミルは『なるほど』と思った。
傷だらけの猫が退魔師をやたら警戒する理由が分かった気がした。
過去に痛い目にあっているから、そう動くんだと。
しかし、タイミングが悪すぎる。ここいらの猫の組織が瓦解して、そういった類いの人間への警戒網が無くなった時に、その人達が来てしまったのだ。どうも、この人達も運が無い方らしい。
『脆弱になった処に、運悪くか・・・。』
「処で、この大きな猫さんは、何ですか?」
テラミルが幽霊に質問する。
「ああ。この猫さんはサスケさんと言って、今はここいらでは最大勢力のボスになるのかな?」
「魔法少女どん。挨拶が遅れもした。おいはサスケと申す。」
「どうも・・・。」
『聞き取り難いしゃべり方だなぁあ。』
コツコツ
また、窓を叩く音が聞こえる。
今度は普通の猫らしい。
「すいません。魔法少女様。入れて貰えるでしょうか?」
テラミルは治療をいったん止め、窓を開けると猫が入って来る。
少し時がたち
「あの、ですねぇえ・・・。」
テラミルの回りは猫だらけになっていた。
狭い部屋に猫がひしめき合う。
「ここは、猫の集会場じゃないんですよ。」
「すいません。警戒網の再構築をしないといけないんで・・。」