黒猫の逃走
黒猫は、光の球の攻撃によってダメージが抜けきっておらず、体反応が鈍い。それでも、宮崎という細身のスーツの拳を交わした後、脇目もふらずに、空き地の外を目指し走り出す。
その瞬間、傷だらけの黒猫は光を浴びる。先ほどシスターと呼ばれる女性の近くにいた猫たちの動きを鈍くしたあの光をまともに浴びたのだった。
傷だらけの猫の動きはスローモーションの様に遅くなり、シスターと呼ばれている黒服の女に捕まってしまい、片手でのどを握られる。
「あんた、随分となめたマネしてくれたな?さて、どう浄化してくれようか?」
そう言いつつ、手の平に力をこめていく。
『すいません。どうも、これまでの様です。』
『ジロー。気にしなくていいよ。ジローと一緒なら。』
「おい、あんた達、そこで何をやっている?」
突然、男の大声が聞こえた。
黒服の女は、傷だらけの猫を地面に投げ捨てる。
「今、人目につくのは、あかん。みんな、逃げるで?」
そう言って、男女4人は逃げ出していった。
『ジロー。助かったね。』
『ええ。』
気を失いかけている、傷だらけの猫に何者かが近づいてくる。
ジローは片目を開けて、その者を見た。
サスケという黒の大猫である。
「あなたでしたか。」
「ジローどん。大丈夫か?」
「ちょっと、駄目みたいです。すいませんが、ある所に連れて行って貰えないでしょうか?」
「何処じゃ?今、ジローどんに消えて貰っては困る。あんしらの対策が打てん。」
「魔法少女さまの家へ。多分、家に帰っている頃合いなので。」
『ジロー。美由ちゃんを巻き込むの?』
「回復をお願いするだけですよ。」
救済者と呼ばれている4人組は、逃げる途中、二手に分かれてしまう。
宮崎とシスターと呼ばれる二人っきりなっていた。
「宮崎兄弟。二人っきりになってしもうたなぁあ。」
「落ち合い場所は決めてあるので、大丈夫でしょう。」
黒服の女は、宮崎という男のほほに手を当てて、優しく顔をなでる。
そして、体を密着させ、うっとりとした表情で男の瞳を見つめる。
「なあ。あの二人もおらんし、ええ、やろ?」
男を女性が放つ香りが包み込む。
「さっきは、山下兄弟に色気出しといて・・。」
そう言って、男は黒服の女に優しくキスをする。
「いじわるやな。あれは、山下兄弟を手もとに置いとくために必要な事やとわかっているやろうに。」
そう言って、男の顔に両手を当て、またキスをする。
「恋をする女が放つ独特の香りを保つため、とっかえひっかえ男を変えているくせに。」
「それは、褒め言葉として受け取っとくわ。この香りは一ヶ月ぐらいで変化するからなぁあ。食事制限と特殊な香水で、パワーアップはさせてるけど、男を釣るには、常に熱い恋をし続けとかんとあかんからなぁあ。」
「全ては、世界の破滅を回避するため。そのためなら、僕は喜んで使い捨ての男になるさ。」
「ありがとうなぁあ。はよ、こんな服脱いで、あんたと愛し合いたいわ。」
「それは困るな。その服でシスターの香りを抑えているから、シスターの香りに引きつけられる男が少なくてすむのに。」