猫と人間との戦い
皆からシスターと呼ばれている黒服の女は、服の中に仕込んでいたB4程の大きさの分厚いハードカバーの黒の本を抜き出し、片手で本を開く。
「罪深きに悪に属する魔のモノ達に、正義の光を。」
彼女が大声でそう言うと、本は強い光を放ったかと思うと、強く光りを浴びた一部の猫たちの体が重くなり、動きが遅くなった。
細身の男はスーツから、金属でごつく装飾された黒皮の手袋をはめ、動きの遅くなった猫に襲いかかる。
「シスター。宮崎兄弟、突然、何を?」
小太りの男はそう言った。
「まあ、見ときや。」
細身の男は動きの遅くなった猫の一匹に地面を這う様な拳を入れる。
拳が入った猫は高く舞い上がり、放物線を描きながら、地面へと転がる。
「宮崎兄弟がパンチを放ったかと思ったら、突然、猫の姿が・・。」
「これが、不浄のモノ達や。」
『勝手な事を・・・。』
傷だらけの黒猫はそう思った。
『ジロー。あの救済者とかいう迷惑な人達だよ?』
『わかってますよ。』
そう言って、傷だらけの猫は、テクテクと、細身の男に向かって歩きだす。
「にゃあ。」
甘えた感じ鳴き声を出す。全く殺気が無い。
細身の男は、逃げだそうともせず、全く無防備そうに見える傷だらけの猫に拳を打ち下ろすが、素早く相手の足下に走り寄り、回避する。そして、相手の足をつたい、背中を通って、相手の肩にのり、甘えた鳴き声で「にゃあ」と鳴いた。
「宮崎兄弟、何をしてるんや?」
シスターの激が飛ぶ。細身の男はジローの首をつかみ、自分の顔前にもってくる。
「にゃあ。」
宮崎は、なめた態度の猫に制裁を加えようと、腹めがけて、拳をはなつが、黒猫は体をふって手から離れる。
『ジローどうするの?』
『ひとまず、時間を稼ぎます。』
『戦うの?私がやる。』
『駄目です。』
黒猫は頭に血が上った宮崎の拳をかわしながら、幽霊にそう言った。
『ええ。何で?』
『戦闘民族のあなたがやると、相手にケガさせる可能性があるでしょ?それじゃ駄目なんですよ。今は相手に私を倒せるチャンスがあると思わせつつ、逃げ回ります。』
『何で?』
『殉教者を作ると、猫よりやっかいだからですよ。』
その瞬間、光の球が黒猫を襲い、飛ばされる。
「宮崎兄弟。いつまで、そないな猫に遊ばれてるねん。」
『うわー。今のは効いたね。』
黒猫は置きあがり、首をふる。
『作戦変更です。逃げます。』