不思議な踊り7
「ジャイロボールってあるじゃないですか。」
「なんちゃってジャイロボールなら、私、投げられるよ。」
「そうなんですか?」
「ただ、ジャイロボールを投げるだけなら、そんなに難しく無いよ。」
「だったら、何でみんな投げないのでしょ?」
「うーんと、あんまり、速くならないから。」
「はぁあ・・・。でも、剛速球投手の代表格みたいにジャイロボーラーって言われているじゃないですか。」
「あれは、それだけの筋力があるからだよ。」
「むー。」
「美由ちゃんは、ボールを投げる瞬間の腕って、L字でしょ?」
「はい。そう言われましたから。」
「ジャイロボーラーは、L字じゃなくて、この腕を伸ばすの。美由ちゃんは肩とヒジが水平だけど、ジャイロボーラーは上半身を斜めにして、肩、ヒジ、手首が一直線の斜めになってて・・。」
「はぁあ・・・。」
「まあ、投げてみれば分かるか。」
美由は状態を斜めに腕を一直線にしてボールを投げる。
ボールは不安定な挙動をしながら進んでいく。
「今のがジャイロボール。何か、渦巻きを描く様に挙動がフラフラ進んでいったでしょ?」
「あんなのが投げられたら、凄いじゃないですか。何で意味が無いって。」
「だって、手首と腕の振りを使わないんだよ?」
「?」
「正確には、手首と腕の振りを横回転をかけるのに使うからなんだけど。美由ちゃん。手首だけで投げるよ?」
「はい。」
美由はボールを持った手の手首だけをひねり、ボールを投げる。結構な速度でボールは飛んでいく。
「今度は腕と、手首を使って投げるよ。」
「はい。」
ボールは手首より、かなり速く飛んでいく。美由が今出せる最高速度と良い勝負ぐらいのスピードが出る。
「手首と腕だけで、結構なスピードが出せるの。この力を横回転をかけるために犠牲にする必要があるんだよ。逆に言うと、ジャイロボーラーは体のひねりだけで、すっぽ抜けであれだけの速度が出せる筋力があるの。」
「凄いですね・・・。」
「当人は、普通のストレートのつもりだけど、たまたま、ジャイロボールになると言えばいいのかな?」
「うーん。一概には言えないような・・・。」
「まあ、筋力が恵まれているならともかく、一般の人が速い速度のボールを投げるには、手首や腕を最大限に使う必要があるんだよ。」
「はい。」
「美由ちゃん。ボール投げてみて。」
美由はボールを投げる。
「はい、そこでストップ。」
美由は動きを止める。
「手首を見て。」
美由は手首を見るが、おざなり程度に曲がっているだけである。
「全然曲がってないでしょ?90度曲げるの90度。はい、手首を曲げる練習。」