不思議な踊り6
「で、何で、綺麗なストレートを覚えるのにカーブをやる必要があるんですか?」
「うーんと、ねぇえ。綺麗なストレートというか、バッターを迷わす程の変化球を投げるにはね。ある程度、ボールを回転させないといけないの。揚力を発生させるために。」
「はぁあ・・・。」
「一応、型だけ整っていれば、シロート目には直線に進んでいる様に見える球が投げられるんだけど、それは回転力が全然足りない球なの。逆に言うと、フォームさえ一定のレベルに達してれば、持ち方はどうであれ、直線ぽっくなるの。」
「良くわからないのですが・・・。」
「うーんと、ナックルにしろ、フォークにしろ、回転はほとんどないわけだけど、打者の前まで一応まっすぐ進んでいるわけでしょ?そういう事。」
「ますます、分からなくなりました。」
「様は、回転をつけられなくても、短い距離なら、フォームが一定のレベルに達していれば、まっすぐに見えるって事。」
「納得いきませんが、ひとまず、そうしときます。」
「で、なんとなくストレートなら誰でも投げられるんだけど、カーブはそういかないの。ちゃんと回転をつけないと曲がらないから。」
「はい。でも、桐野さんが、私にカーブを教えるのを抵抗してたんですけど・・。」
「うーんと、多分、こういう事じゃないかな?」
そう言って、美由はマウントポジションを取る。
「カーブを投げるよ。」
「はい。」
美由はボールを投げるが、良くわからない。
「今のがカーブ。」
「はあ・・・。」
「まあ、そうだよね。」
「だったら、もう一回投げるよ。」
「はい。」
今度は、腕の振りが微妙に違うのが分かり、ボールが分かる様に曲がる。
「分かったかな?」
「曲がりました。」
「さっきと今ので、違いわかるかな?」
「腕の感触が違いました。」
「そう、肩、腕、手首、指でカーブがかかる様にひねりを入れたの。」
「そうすれば、綺麗なカーブになるんですね。」
「綺麗なカーブになるけど、バッターから観るとフォームが露骨に違うから、こんな投げ方すれば、県大会の上位常連のレギュラークラスなら、どの球種を投げるかまるわかりになるけどね。」
「あうー。」
「要はね。カーブもただ曲げたいのであれば、こうやって、切る様に腕や手首で回転をかければ、曲がるのね。」
「はい。」
「ここで、投手が速球派か、変化球派にわかれるわけ。」
「??」
「要は、腕と手首で切れば、より大きな変化球になるわけでしょ?」
「ええ。」
「だったら、速球フォームを捨てて、大きな変化球になる投げ方主体にすればいいわけじゃない。」
「・・・・。そんなもんなんですか?」
「そんなもんだって。多分、舞ちゃんは、この切る癖を覚えさせたくないんじゃないかな?速球派でゴーみたいな。」
「そうなんですか?」
「それにねぇえ。舞ちゃんの投げ方は、速球にはいいんだけど、横の変化が付けにくいの。その何とか先生の投げ方の方が、変化球向けではあるんだけど。」
「良くわかりませんが、そういう事にしときます。」
「ええとね。私も美由ちゃんなら、速球派が良いと思うな。今の美由ちゃんだと、100K超える球は無理だけど、結構慣れれば、今のフォームで110K超える処まではいけると思うんだ。そこから、フォームを投げやすい形にカスタマイズすれば120K後半までは行くと思うんだけど。」
「それ以上は無理なんですか?150Kとかあるじゃないですか。」
「それは、男性だから出せるスピードだと思うんだけど。ひとまず、練習練習。一日100球なげて10日もやれば、100K超える球が投げられるって。」
「そんなにかかるんですか?」
「そんなにかかるものだよ。」