休み時間
月見は美由達の学校の授業を受け、この学校の授業は遅れていると感じていた。
実際はこの学校が遅れているのではなく、月見の学園の授業が進み過ぎているだけであるのだが、彼女にはそれがわからなった。
彼女の通う学校は幼稚舎から大学まである学園であるため、中等部から高校の範囲まで入れてやっていた。
中学校の授業というのは、高校まで修学する事を前提にすると非効率な処があり、高校レベルの知識があった方が理解しやすく、授業効率が高い。中等部から高校の内容をやっているのだ。それに、高校受験を考える必要がないので、高校受験ぐらいにしか使えないレベルの高い事を飛ばす事が出来た。
数学で言うなら中学三年の二学期には高校の範囲に入っているし、理科にいたっては中学校の授業部分を放棄して、高校の理科基礎A・Bを4年間かけて丁寧にやっている状態だった。例をあげれば中学校の化学で原子・分子をやっている。
ただ、基礎よりちょい上ぐらいまでしか教えないので、基本問題レベルになると全く歯が立たない状態であった。
月見達の学園の生徒が、はじめのうちは一般入学の生徒より成績が良いマジックがここにあったし、1年待たずに学園に帰る生徒が続出する理由もここにあった。
月見は授業が遅れているのに、生涯役に立たちそうもない、細かく複雑で難しい事をダラダラやっている事にいらだちすら覚えた。
二時限目の授業が終わり、休み時間になると、数人の女性が月見を取り囲む。
客人として月見に接待シフトが組まれていて、接待役に選ばれた人たちであった。
「月見さん。授業はどうでした?」
「学園の方に比べたら、大夫遅れているわね。」
「まあ、仕方ありませんわ。私達も一年の頃は既に中等部でやった事をまたやって面をくらいましたし。」
月見は困った状況に陥っていた。
電話がかけらないのだ。
休み時間に電話をかけようと考えていたのだが、接待シフトが組まれていて、それに対応せざるを得ない状態にあった。
緊急性の高い事案という訳では無いため、昼休みに電話すれば良いのだが、なるべく早く対応がしたかった。
彼女が電話をしたかったのは自分の部隊がやっている屋敷の改築の進行状況を確認と、今朝の桐野の猫や朋の事について神園に質問をする事だった。
たわいも無い電話なら、そこら辺でも構わないのだが、結構、複雑な事情を抱えているので、電話する場所を考えなければならない。
それにこの接待役の人たちを別れ、適当な場所を探して電話するには時間が短すぎた。
休み時間、朋のクラスに芹ヶ野加奈がやってきた。
「おおい。朋ちゃん。」
朋はいつもの三人組と話していたのだが、加奈に呼ばれた。
ちっちゃい子は加奈の元へと、てけてけと駆け寄る。
「どうしたの加奈ちゃん?」
芹ヶ野は、にやけ顔で朋に話はじめる。
「聞いたよ。LHRの終わりに、月見ねぇえさまと握手したんだって?」
「うん。」
「何でそんな事になったの?教えて?」
彼女はこの類いのゴシップが好きな女性で、学業を切り捨て、情報収集に命をかけている困った人物であった。
朋は正確な事を言えない事情があったので困ってしまう。
「えっとね。美由先輩に挨拶しにいったら、突然、握手を求めらたの。」
「どうして?」
「麗菜先輩の友達と勘違いされたらしくって。その時、美由先輩は麗菜先輩と一緒にいたから。」
「なーんだ。」
「残念でした。」
「そだ、美由先輩と桐野先輩と麗菜おねぇえ様について何か知らない?」
「知らないよ。美由先輩が揉めていた頃に仲良くなったぐらいしか。そのせいで、全然、美由先輩にあえないのです。前は登下校の時は一緒に帰れたのに、最近はバスだす。」
「ほうほう。なるほど、なるほど。自分だけの美由先輩でいてほしかったのにと。」
「あうー。そうは言って無いのです。でも、もう少し、前みたいに遊んで欲しいのです。」