おおおお
「ねぇえ。ジロー。あの退魔師さん。月見さんだっけ?同じ顔をしているけどちっこい方の。強いと思う?」
「実戦は見てませんが、強いと思いますよ。身体能力で言うならおっきい方の魔法少女様の通常状態と良い勝負だと思いますよ。」
「美由ちゃんと良い勝負か。それは興味深い。」
「それに、あの身のこなしから見て、かなりの格闘経験は積んでいると思われるので、そこらへんの男では勝負にならないと思いますよ。」
「美由ちゃんと私を足して互角って処?」
「どうでしょうねぇえ。そこら辺は実戦を見てみないと何とも。」
月見は麗菜の胸から離れ、難しい顔をして朋に近づく。
そして、朋の前に来ると満面の笑みを作る。
「おはよう。あなた、お名前は?」
朋はちょっとオドオドしていたが、軽く頭を下げる。
「成美矢 朋と言います。1年生です。」
「ともちゃんね?処で、あなたは、姉さんとはどんな関係?」
朋は少し考える。美由にハンカチを返しにいった時、桐野が猫の攻撃を食らって、気絶する直前に会話した記憶しかない。
「麗菜先輩とは、一言、二言、言葉を交わしたぐらいで、それ以外は特には。」
「そうなの?桜間さん・・。ああ、桜間先輩と仲がよさそうだったから。てっきりねぇえさんも知っていると思ったんだけど。それより・・・。」
そう言って、月見は手を朋の前に出す。
「私と手をつないでもらえるかな?」
「?」
朋は月見と手をつないだ。
その次の瞬間、夢の世界へ行く直前の感覚に襲われる。
「へぇえ。やっぱり。あなたは何者なのかしら?」
「あうー。」
朋が困っているっていると、『パンパンパン』と手を叩く音が聞こえた。
手を叩いたのは近藤先生だった。
「はいはい、そこの女子生徒達。2時間目がそろそろ始まるよ。月見君もこんな小さな生徒をいじめてないで、自分のクラスに戻った、戻った。」
体育館を出て、教室に向かっていると、桐野の猫が走り抜けている。
『もどき?の猫が、こんな堂々と・・・。』
月見はそう思った。
桐野・美由・朋の視線がその猫を追う。
桐野は一瞬追いかけようとしたが、授業があるのであきらめる。
「くろさーん。大変にゃ。」
体育館に間抜けな声が響き渡る。
「はい、何ですか?と、言うか、あなた、退魔師に姿を見られましたよ?」
「それどころじゃないにゃ。暴走の兆候が出ている猫が何匹か現れたにゃ。」
「・・・・・・。」
「ジロー。ファイト!」