体育館にいる黒猫と幽霊
体育館で近藤先生の講義は続いていた。
「女は男より遙かにマザコンだし、ファザコンだと。」
スピーカーから響き渡る近藤の声。
そんな講義を体育館の隅で聴いている、黒猫と幽霊の本田がいた。
「ねぇえ。ジロー。帰ろうよー。」
セーラー服の少女の本田がそう言った。
「帰るって、何処へですか?私達は根無し草の上に、今、追われているんですよ?」
黒猫が切り返す。
「せっかく、ボス猫さんに見逃して貰えるという約束取り付けたけど、ジローを驚異と思っている団体には関係ないからね。でも、この講義を聴いているよりはマシだよ。」
「ここが、今、一番、安全だと説明したでしょ。ここだと退魔師がいるので下手に暴れる事が出来ないからと。それに結構、興味深い話ですよ?」
「でも、言っている事が極端でー。」
「私はそうは思いませんけど。」
「だって、女の子はファザコンだマザコンだとか言っているよ?」
「私の記憶ではあなたは、少し父親を避けてはいても、両親ともにとても中が良かった様な・・。」
「それだけじゃ、マザコンやファザコンじゃないよー。」
「いや、男が、もしあなたレベルに両親と仲が良かったら、バッシングの対象ですよ。ただ、プロデュースされていないから無自覚なだけであって。あなたを男に置き換えて考えてみればわかるかと。」
「うー。確かに・・・。」
「あなたが結婚するとして、まあ、今は亡くなっているのでそれも出来ませんが、もし、結婚するとして、相手の男が両親と仲が悪くていざこざが耐えないより、そこそこ仲が良く、平和的に付き合っていけた方がいいでしょ?」
「そりゃねぇえ。」
「なんか、納得して貰えてないみたいなで、少し見方を変えて、結婚した男があなたの両親と仲が悪いのは、あなたは嫌でしょ?」
「ええ。それは嫌だぁあ。」
「過剰なのはどうかとは思いますがマザコン・ファザコン自体は決して悪では無いんですよ。」
「だったら、何でマザコン・ファザコン悪説が広がっているの?」
「本質的な面は諸事情で省きますが、馬鹿女にとって都合が良いさそうに見える理論を展開した方がモノが売れるからです。」
「何で?」
「女性は、自分で考えないけど、その場、その場の場で、誰かかが自分を満してくれるのが当たり前と考える傾向が強いからです。」
「ジロー。女を敵に回してるね。」
「回しているのは、これを書いている作者でしょ。」
「その、女は場当たり的に誰かが満たすのが当たり前という考え方が、どうして、モノが売れる事につながるの?」
「今、これが流行ってます!!とか、このブランド凄いです!!とか言えば、何も考えずに飛びついて買うからですよ。自分の財力で買えないのなら、男に買って貰えば良いわけで。人生経験を積んだ大人が近くにいれば、それを止めるでしょ?無駄遣いだとかいって。両親が近くにいなければ、こういった抑止力が無くなるわけで。大事なのは、馬鹿で、それを止めるヤツがいない方がモノを売る側から見れば、ありがたいって話なんですよ。」
「そんな事をしてれば、借金が増えるよ。」
「ええだから、爆発的に金貸し業者が増えたわけで、プラスティックバブルと言ってもわからないか。金貸し会社やローン会社がカードを発行するでしょ?そのカードバブルが起きて、はじけて、経済が傾くという自体が起こっているんですよ。」
「何か大変そう。」
「気にしないでいいですよ。あなたは既に亡くなっているので。」