ボスのところへ
「ジロー。私、消えなくていいの?」
「消えたいんですか?」
「うーん。」
セーラー服の少女は唇に人差し指を置き、上を見て考える。
「どっちでも良いけど、せっかくジローに会えたし、美由ちゃんや舞ちゃんと友達になれたから、もう少し存在していたいかな。」
「そうですか。」
「でも、ジロー?いまいち、私が消えなくても良いっていう意味が分からないんだけど。」
「あなたが消えないといけない理由は、『あなたが消え無いと私が前の地位に戻れない』というものです。内乱が起こったので、この内乱の結末を迎えようとも、私は前の地位には戻れません。」
「なんで?」
「トップがすげ変わるからですよ。上が変わるので、組織運営の形も変わるわけで。多分、私に依存しない体制にならざるを得ないので、私の前の地位は新体制には邪魔になるんですよ。」
「あのボス猫がいなくなるの?」
「ボスはかわら無いと思いますけど。NO2から下がごっそり変わるでしょうね。」
「ボス猫が変わらないのなら、やっぱり私が消え無いと駄目じゃない?」
「そんな心配はいらないと思うんですけどねぇえ。新たな支配体制では、ボスは傀儡になるんで、そういったワガママのために権限を振るえなくなるので。」
「うーん。ジローの話は確定要素に欠けるなぁあ。よし、今からボス猫の処に行こう!」
「何故です?」
「お願いするの。ジローと、もう一緒に居ても良い様に。」
「私は、あなたがボスに、お願いをしに行く事には反対しませんが。今、出て行ったら危険ですよ?」
「ジローがいるから大丈夫だよ。」
「私にもボスの処に行けと。」
「うん。だって、この依り代だと動けないし。何よりボス猫の家知らないし。」
「わかりましたよ。途中で猫に襲われて、共倒れになっても恨まないでくださいね。」
「ジローとだったら別にいいよ。」
「あ、あのー。」
テラミルは猫と本田の会話に口を挟む。
「何でしょうか?魔法少女さま。」
「私はどうすれば?」
「何もしないで下さい。」
「わかりました。」
本田は傷だらけの猫に取り憑く。そして、窓枠に飛び乗り、美由の方に顔を向ける。
「それでは行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
傷だらけの猫は美由の家から出て、町中を走りだす。彼を待ち伏せていた猫たちが襲いかかってくる。
黒猫は特攻で強引に囲みを抜けるが、すぐに回り込まれる。
「ジローは強引だな。私にやらせて。」
「あんまり無茶はしないで下さいね。」
「それはやってみないと分からない。」
黒猫は回り込んできた猫めがけて特攻をかけたと思うと、高くジャンプをして空中で回転をしながら、ブロック塀の上へと乗り、体が横に傾いている状態のまま、ブロック塀の上を強引に走りだす。
「さあて、どこまでついてこれるかな?」
ブロック塀の終点に辿り着くと、ジャンプして別のブロック塀に一瞬足をかけ、家の屋根に飛び移り、そのまま電線に飛び移る。
「ねえ、ジロー?電線使って移動できる猫ってどれくらいいる?」
「何匹かいますけど、あのメンツには出来るのはいません。」
「それは良かった。このまま、ボスの処にまっしぐらだ。」
「そう上手く行くといいんですけどね。」