ああああ
「ふう」
美由は自分の家に戻り、鞄を机に置き溜息をつく。
「どうしたの美由ちゃん?」
そう聞いたのは幽霊の少女だ。
美由は外を見る。
「あなたを黒猫さんに返しいかないと行けないのに、雨が降ってるなと思って。」
「私は濡れるの平気だよ。雨、大好き。」
「そりゃ、あなたは物理的な干渉が無いので濡れないかもしれませんけど、私は違うわけで。」
「さっきも、雨の中下校してたじゃない。」
「雨の中に再度、飛び込むのには勇気がいるんですよ。」
「そんなものかなぁあ。」
「それより、黒猫さんどこにいるか知ってます?」
「ジロー?しらなーい。私、二・三日前にこの街に来たばっかりだし。」
「来たばっかり?今まで遠くにいたのに、どうやって黒猫さんを見つけたんですか?」
「うーんと、ジローって分かりやすい特徴があるじゃん。」
「体中にある傷ですか?」
「そう、それにさ。ジローって噂になりやすいんだよね。本人は自分が目立っているなんて思って無いみたいだど、かなり目立つ事をするじゃん。だから、そこら辺にいる化け猫を探して、片っ端から聞きまくれば、きっと見つかると思ったんだ。2年もかかったけど。」
「2年ですか。探すの諦めなかったんですか?」
「うーんと。諦めても良かったんだけど、諦める理由と出会えなかったから。」
「理由と?」
「私が居て良いとか言ってくれる素敵な男の子とか現れたら、ジローを探すの辞めてたと思うんだけど、そういうの無かったし。それに私には他に目的が無かったから。存在はし続けてるわけでしょ?せっかくだから何かの目的に向かって頑張った方がいいかなと。」
「前向きな幽霊さんですね。」
「うーん。そうなのかな?自分的には、ただ、流されてここまで来たって感じなんだけどなぁあ。」
コツコツと、窓を叩く音がした。
「ん?」
美由は窓を開ける。そこには、真新しい傷がいっぱいついた、傷だらけの黒猫がいた。
「すいません。ちょっと、逃げ込まして下さい。」
弱々しい声で彼はそういった。