幽霊に体を遊ばれる美由
美由は元に戻る。
セーラー服の少女は、また美由に取り憑いた。
彼女は美由の肩に腕を回し、耳元に口を寄せ囁く。
「ねぇえ。お願いがあるんだけどな。」
甘い声で彼女はそう言った。
「何ですか?」
「少し体を貸して。」
「はい?も、もしかして、体を乗っ取れるんですか?」
「うーん。私の場合は乗っ取るというのとは、ちょっと、違うんだけど、まあ、説明が面倒くさいから、そうして置こうかな?」
「もしかして、チャンスさえあれば、いつでも、私の体を乗っ取れたと・・・。」
美由は青ざめる。
「それは無理だから安心して。」
「ほっ。」
「私の場合は、相手の意思と連動して、相手の意思に私が動きたい様にお願いする類いのものだから。だから、あなたの許可が無いと無理なの、それに、あなたの意識がはっきりしてないと駄目だから、いつでも体を取り戻す事が出来るよ。」
「何か、一つの動作をするだけでも時間がかかりそうですね。」
「慣れれば、ほとんどタイムラグは出ないよ。」
「へぇえ。でも、それって、誰かの体を乗っ取った事があるって事ですよね。」
「うん。ジローの体で結構やったよー。」
「猫の体と、人間の体は違うと思うんですが・・。」
「大丈夫だって。猫よりかは人間の方が構造が近いから。猫は命令系統が人間と大夫違っているから、結構ヘマをしたけど。ほら、ジローって傷があるじゃない?あれの幾つかは私がヘマやってつけたものだし。」
「うわー。色々な意味で聞きたく無かった。」
美由は何だかんだで、体を貸す事なった。
まず、足で地面を2・3回蹴る
その場で屈伸をしたかと思うと、軽く二・三回ジャンプした後、少し高めにジャンプをする。
そして、ゆっくりと歩き出したかと思うと、軽く走り出し、軽くジャンプをする。
今度は、体を前のめりに倒し、加速が付いたところで、ジャンプをする。
『何?この跳躍。まるで体が浮いてるみたい。』
「へぇえ。結構、お堅い鍛え方をしてると思ったけど、随分、柔軟な体作りをしてるんだね。」
逆立ちをした後、片手を地面から外し、片手でジャンプをする。そして地面に倒れ、飛び上がるって立ち上がる。
「うん。悪く無いね。この体。でも、もうちょっと、バネのある方が私はごのみかな?」
さて本気で動いてみるかな。
彼女は全力で走り始める。ブロック塀の壁に向かって。
『わぁあ。ちょっと待って下さい。』
寸前でブレーキをかける。
鼻にブロック塀のざらざらした感触があった。
「ちょっとミス。てっへ。」
『てっへ、じゃないですよ。』
今度は、前転をして前に進み、側転からバク転に入る。
『怖いです。やめてください。』
「体を途中で元に戻すと事故るよ。変な意思の介入も、ノイズが入って思わぬ影響が出るから、ケガしたくなかったら余計な干渉はしないようにしないと。」
「ううう。」
美由は体を返して貰い、ウチへと帰り、学校の制服を着ていると、桐野がやってくる。
玄関で美由を見た、桐野は唖然とする。
「ねぇえ。桜間さん?あなた、取り憑かれてない?」