美由と幽霊
「はぁあ。」
桜間美由は肩を落としながら溜息をついた。
「あれ、魔法少女さん。溜息なんかついてどうしたんですか?」
美由の肩あたりから上半身を出した、セーラー服の細身の少女がそう言った。
「あなたに取り憑かれているからです。」
「仕方ないじゃん。決断を先送りしたんだから。こういうのは早めに処理しないと後々までずっとついてまわりますよ。」
「あなたは、私の呪いですか?」
「ああ、ジローも昨日の夜、同じ事言ってた。多分、そうかもね。」
「そうですか。というか、表に出てこないで下さい。猫達に気づかれたら襲われるかもしれませんよ。」
「ええ。だって、せっかく依り代に取り憑いているんだし。人の姿でお話したいじゃん。年上のお姉さんと一緒に散歩するの夢だったんだ。」
「私は霊に取り憑かれないで生きていたいと願っていたのに。」
「それに、私、こう見えても強いんだよ。」
「何か、黒猫さんもそんな事を言ってましたね。でも、幽霊じゃないですか。どうやって、力を発揮するんですか?あ、霊的な力が強いとか」
「うーん。霊的な力は強いとは思うけど、そういうのは、ハッキリと霊体を維持出来るくらいしかできないかな。」
「だったら、どう強いんですか?」
「もちろん、格闘技。」
「物理的な干渉が出来ないのに、役に立つんですかそれ?」
「化け物さん達には、干渉できるから大丈夫。その分、化け物さん達も私に干渉出来るけど。」
「魔法少女みたいなもんなんですかね。」
「ねぇえ。魔法少女さん。変身して。」
「嫌です。」
「見たい見たい。女の子の憧れ魔法少女に変身するの見たい。」
「駄目です。と言うより、あなたが取り憑いているんで、今変身すると、魔法少女の自動防衛が働いて、あなたがタダですまないと思いますよ。」
「だったら、何か別に取り憑くから見せてよ。」
「いやです。恥ずかしい。」
「ええ。だったら、学校で嫌がせしますよ。」
「何でそうなるんですか・・・。分かりました。ちょっとだけですよ。」
少女は美由から離れる。
美由はテラミルへと変身した。
「これでいいですか?」
「何て言うか。しょぼいね。もっと、ヒラヒラでボリューム感のある感じだとばかり。何かピンチに陥った時にゴージャスになるのかな?」
「ピンチは何度もありましたが、そんな変身した事ありません。」
「ええ。つまんない。」
「だったら、ビームとか出ないの?」
「そういった、ものを出した事はありません。」
「だったら、どうやって悪と戦っているの?」
「悪と何か戦ってませんけど、私が使える攻撃と呼べるものは相手に手を触れて精神吸収する事ぐらいです。」
「しょぼいなぁあ。もの凄くがっかり。」
「はいはい、どうせ、私は残念な魔法少女ですよ。」