幽霊
傷だらけのクロネコは空き地で、ただ一人倒れていた。
彼が気に入らない猫たちのリンチにあい、ボロ雑巾の様になっていた。
彼は元々この地域の猫ではなく、よそからやって来た猫である。そんなよそ者の猫が実質NO2である事に不満を持っている猫は多かった。それに彼は独断で物事を勝手に行っていたので、昭和の大学体育会系の様な考え方をしている猫が多いため、周りを立てないやりかたに不満が募っていた。
ただ、かれが独断専行を行っていたのには理由があった。
問題が起った時、表面上は責任感があり積極性を示している様に見える声が大きい猫がいっぱい出てくる。そういう猫たちが物事を解決してくれるだろうと思って放置しておくと、大抵の場合、状況が破綻してしまうのだ。そうなってから、自分に責任を押しつけてこられる。
正直な話、破綻した状況になってから問題を解決するより、破綻する前に問題を解決した方が遙かに仕事が楽なのだ。
そのため、そういった連中に任せずに、独断専行を行うようになっていった。そういった周囲に関わらせないやり方に不満を持つ猫は多かった。
そういった不満から、今回のリンチが行われたのだった。
『さて、どうしますかね?』
黒猫はピクリとも体を動かさず、横になり、目を閉じてそう思った。
『いけない。いけない。そう考えるのは無駄だとわかっているのに。考えてしまう。今は体を休めないと。』
黒猫は寝ようと思うのだが、『どうするのか?』という思いが次々と浮かび上がり、中々寝付けなった。
『今は寝て、体の回復を待つしか無いと分かっているのに、駄目ですね。私では、今起こっている問題を解決できないのは分かっているのに。本当は解決する事も出来るのかもしれないけれど、それを選択する事が出来ないでいる。魔法少女様に責任を押しつけようと思ったのですが、まさか、幽霊が苦手とは・・・。世の中上手くいかないものですね。後はなるようにしかならないのですから、考えても無駄なのは分かっているのですが・・。』
「やっと見つけた。」
ふと、若い女性の声が、彼の耳元で聞こえてきた。
黒猫は片目を開ける。
そこにいたのは、セーラー服を着た細身の女性だった。
ただし、その女性の体は透けており、青白い光をはなっている。
彼女は幽霊であった。
「見つかってしまいましたか。」
「はい。やっと見つけました。」
『まったく、先延ばしすると、ロクな事はありませんね。』