夢の中の世界2
朋は自分の手を、いつも見ている形にしようと頑張るが、小学生低学年が描く手の様な形がやっとであった。
「駄目なようじゃな。」
「あうー。難しいのです。普段見慣れてるもののはずなのに、全然できないのです。美由せんぱいは最初から出来たんですか?」
「魔法少女その1は、まだ大夫マシじゃったぞい。一応それなりに、人の形は作れておった。」
「やっぱり美由先輩は凄いのです。私は才能が無いので駄目なのです。」
「そういう問題では無いと思うがのう。ただ単に脳内シミュレート力を普段から鍛えて無いだけじゃと思うぞい。」
「鍛えたら何とかなると思いますか?」
「そりゃ、鍛えれば何とかなるじゃろう。」
「がんばります。この世界でちゃんと自分の体を実体化できれば、魔法力があがるんですよね?」
「さあ。どうなんじゃろうなぁあ。この修行では、お主が思っている程には魔法力もあがらんと思うぞい。」
「ええ?だったら何で私をこの世界に。」
「魔法力を現実で行使するのであれば、まず、自分の脳内で思っている自分の肉体と、現実での自分の肉体とのギャップを出来る限り無くす必要があるんじゃよ。今のお主がそんな姿なのは現実と脳内とのギャップがかなりあるからじゃ。それでは、魔法力を使う事が出来ん。」
「じゃあ、魔法を使うためには、まず、ちゃんと自分をこの世界に存在させなきゃ駄目って事ですね?」
「別にそうでもない。」
「あうー。言っている事が無茶苦茶なのです。」
「そうはいっても、この世界に入れなくとも、魔法を使える連中はいっぱいいるからのう。例えば猫どもとか。」
「猫さんも魔法が使えるんですか?」
「暴走した猫なんかも、言い換えれば、肉体強化の魔法を使っているといえるじゃろ?雷や炎を出す事だけが、魔法ではないという事じゃよ。」
「なるほど。」
「魔法少女その2の場合、化け猫どもの様な力押しで魔法力を行使できるわけではないので、まずは針に糸を通す様な感覚を身につけてからじゃないと駄目なんじゃよ。」
「がんばります。」
「がんばらんでええ。」
「ええ?どうしてですか?」
「さっきも言ったじゃろ。化け物にあまり関わるなと。」
「ぶー。だったら、何で連れて来たんですか?」
蛙主は一瞬無言になる。
「何と無く、流れで?良く考えてみれば、連れてくるべきじゃ無かったのう。」
「深く考えて無かったんですね。」
「まあ、この世界で存在をちゃんと表示させられれば、頭の回転は間違い無く速くなる。魔法少女その2の勉強の役にたつと思ったとしとこうかの。まあ、もう連れてくる事も無いじゃろうが。」
「蛙さんが連れて来ないと私、この世界で修行できないのです。」
「修行する必要は無いといっておろうが、どうしてもしたいのなら、目を閉じて妄想してれば良い。この世界は妄想の延長線上でしかない。」
「妄想ですか?」
「そうじゃ。」
「何か疲れてきたのです。」
「長くここにおったからのう。頭の負担が大きいし。そろそろ戻るか。」
「はい。」