雷の話
ポツポツと雨が落ちてきたかと思うと、突然、雨脚が強くなった。
朋は手に握っていた水色の傘を開き、頭に乗っている蛙主に傘の先が当たらないようにさした。
「雨がふってきたのです。」
大粒で大量の雨が傘に当たり、朋の声が聞こえない。
「あ、聞こえん。」
蛙主は叫ぶ。
「このままじゃ、ずぶ濡れになるので、そこのトイレで雨宿りしましょう?」
「あ?なんじゃあ?」
「雨宿りです。」
そう言って、朋は走り出した。
走っている最中に白い光がチカチカと二人を包む。
朋達がトイレにたどり着いた時に、雷の大きな音が響き渡った。
雨宿り出来る場所まで来たので朋は傘を閉じる。蛙主は彼女の頭から降りた。二人は大粒の雨が降り注ぐ公園を見る。
「うひょう。これは凄いのう。」
蛙主が土砂降りのすごさへの感想を述べた次の瞬間。白い瞬きと同時に雷の大きな音が響きわたる。
「おお、近くに落ちたな。」
彼は嬉しそうにそう言った。
「蛙さん嬉しそうなのです。ここに避難してなかったら、危なかったのです。」
「ここは、建物が多いから、そうそう当たらんて。」
「楽観的なのです。」
「そうかのう。わしが住んでいる山とかに比べれば、遙かに安全じゃ。」
「山は木に囲まれているから、大丈夫じゃないんですか?」
「そんな事は無い。木を伝って雷は落ちてくる。」
「でも、木が避雷針の役目をして大丈夫なんじゃ?」
「避雷針というのは良くわからんが、雷が落ちた木の周囲2mぐらいの空間は強烈な静電気につつまれるぞい。ワシも雷が落ちた木の近くにいて感電した事がある。」
「そうなんですか?」
「雷は見た目的に一本線の様に見えるが、それは見えている部分だけで、その光の線を包み込む様に大量の電気を帯びた透明の空間があるんじゃよ。まあ、これは、あくまでワシが雷をくらった時の感想じゃがのう。」
「蛙さんの経験上の話ですか。」
「まあ、それを前提として、何も無い草原に5mを超える木が一本あったとする。」
「はい」
「その木の真下にいたら駄目じゃ。木から2m程離れておらんと、木を伝って降りてくる雷の見えない大量の電気を帯びた空間の範囲に入って感電するのじゃ。」
「覚えておきます。」
「あと、しゃがまんと駄目だぞい。」
「何でですか?」
「木を伝っている、見えている部分の雷の一部が、空気を伝ってこっちに側に流れててくるからじゃ。」
「あうー。だったらしゃがんでいても駄目なような」
「体が地面にちかければ、地面の方へながれるじゃろ?」
「なるほど。木から2m程離れて、しゃがむんですね。」
「そうすべきじゃろうな。まあ、何も無い草原で木が一本ある場所とか、そんなには無いじゃろうが。」
「学校のグラウンドとかが、あるじゃないですか。」