朋と蛙が街を歩く。
蛍光色の水色の傘を手に持った少女が団地の近くにある公園を歩いていた。
この公園は四方を何とか車がすれ違える程度の幅がある道路が囲んでおり、その道路を囲む様に一軒家が並んでいる。
少し前に、朋と蛙主が暴走した猫と戦った場所である。
朋は自分の頭の上に乗せている大きな蛙を落とさない様に歩いていく。
「蛙さん、ここ覚えてますか?」
「おお、覚えとるぞ。猫に喰われそうになった。」
「あのときの猫さんって、美由先輩と蛙さんが助けたんですよね?」
朋が言っているのは猫の化け物が暴走して巨大かつ凶暴化したのを、元の大人猫みたいに戻した事を言っていた。
「そうじゃ。」
「助かったのは美由先輩に聞いたんですけど、その後どうなったんですか?」
「さあのう。ワシは猫の世界には興味は無いから知らん。」
「そうなんですか。あの時、蛙さんが私の力を抑えてくれたから、私は消えずにすんだんですよね。蛙さんが私の頭の上に乗っててくれれば、私も魔法少女として活躍できそうなのです。」
「それは、諦めた方がええ。」
「どうしてですか?」
「ワシが制御しているのは、存在の力の使用量を抑えておるだけで、結局消費しておる事には変わらん。魔法少女その1の様に魔法力で存在の力を全く使用していないに近い状態に出来るならともかく、お主のはそれが出来ん。多分、わしが制御しても一時間もしないうちに消滅するじゃろう。」
「あうー。だったら、私が魔法力を鍛えたら何とかなるとか。」
「多分、無理じゃろうな。」
「何でです?」
「詳しくはわからんが、ワシの感触だと魔法少女その1と、力を作り出すシステムが大夫違うと思うからじゃ。多分じゃが、お主のは魔法少女になるのに、どうしても存在の力を一定量消費し続けなくてはならない様になっていると思うぞい。」
「あうー。使えないのです。そう言えば、存在の力って回復しないんですか?」
「するぞい。しなかったら、魔法少女その1も今頃、消えておるじゃろ。」
「だったら。回復を待って、使用するとか。」
「存在の力自体は、そんなに急激に回復せんぞい。ゴハンを食べて、肉体が代謝して何日も何十日もかけてゆっくりと回復するんじゃ。お主の消費量を考えれば、変身せん方が無難じゃ。」
「むー。でも、美由せんぱいの役には立ちたいのです。」
「魔法少女その1は、そんな事を望まないどころか、迷惑なだけと思うがのう。お主の様なカワイイ女の子にケガをさせるかもしれない、もしかしたら死ぬかも知れない様な事に巻き込みたく無いと考えているはずじゃ。」
「それでも、役に立ちたいのです。」
「多分、魔法少女にならなくても充分に役には立っていると思うぞい?」
「どうしてですか?私、何も出来ないのです。」
「魔法少女としては役には立たなくても、秘密を分かち合える存在がいるというのは、それだけで安心できるもんじゃ。お主は魔法少女その1のそんな存在であればいいんじゃないかのう?」
朋は何か納得がいかない風だった。
遠くで雷のゴロゴロという音が聞こえてくる。
「雷さんなのです。」
「お主、雷は嫌いか?」
「わからないです。でも、そんなには怖くは無いです。」