神棚
神園が玄関を開けるとそこには、月見の部隊の人間達が整列して立っている。
彼女は顔を引きつらせながら、それを確認した後、問答無用で玄関を閉じた。
月見は玄関にかけよってくる。
「だあれぇえ?」
神園は振り返り、玄関扉に肩をつけ、右手でおでこを隠した。
「いや。気にしないでくれ。」
ドンドンドンと、外にいる人間が玄関を叩く。
「月見様開けて下さい。」
声の主は月見の部隊の隊長代理である。
「はーい。今、開けるから。ほら、邪魔邪魔。」
そう言って、玄関の扉を塞いでいる神園をどかして、扉を開けた。
「入って、入って。」
月見の部隊の人間達は、神園の家にずかずか上がり込む。
「おい、あんた。」
「やだ、月ちゃんと呼んでって言ってるじゃない。」
「ああ、じゃあ、月ちゃんさんよ。こいつらは何だ?」
「あなたもご存じの私の部下よ。」
「月見様。言われた通り御札の方を持って参りました。」
部隊長代理が月見に紫色の包みを渡す。
彼女はそれを両手で受け取る。
「こういう事。御札がいるでしょ?それに儀式用の道具が足りなかったから色々持ってきてもらったのよ。」
「ああ、そうかい・・・。」
神棚の設置が終わり、神棚に御札を入れる儀式が始まろうとしていた。
「まてまて。色々と突っ込みどころがある。」
神園が儀式の不自然さに気づいた。
「まず、そこの真田さんが何で、祭司の位置に立っている。」
神園が指を指した先は、ちゃんと神職の正装をした真田がいた。
「だって、ここの中で神職の資格を持っているの真田さんだけだもん。せっかく、神職の資格をもっている人がいるんだから、やって貰わなきゃ損だって。私が持っていればやるんだけど、ほら、私、高校卒業してないから講習受けられないし。」
「あ、そうかい。だったら、次はあんた・・。」
「だから、月ちゃんと呼んでよ。」
「では、月ちゃんさんよ。何であんたの序列が一位で、この隊長代理が2位で、家主の私が3位で、店長が4位なんだ?」
「ええ?そっちの端が格上じゃかったけ?」
「んなわけあるか、それに、何であの女が後ろの位置にいる。」
神園は後ろに外れて立っている美由を指さしそういった。
「神園さん。私は別に後ろの方でも」
美由はそういった。
「ええい。そういう問題じゃない。そこは、童女の位置だ。あんた高校生だろ。」
「ワガママが多いわね。めんどくさいからこのまま行くわよ。」
「・・・・・。まるで、私一人が空気を読めてないかの様に・・・・。」
儀式はつつがなく進む。
真田が3番目の社に御札を入れようとした時、神園の目に『須王寺』の文字が映る。
「ああ。」
月見はすぐに、神園の口を押さえる。
「儀式中だから静かにしなさい。」
「くう・・・。」
社の端に寄りそう様にぬいぐるみが置かれ、次に神饌が置かれる。
真田が祝詞を述べ、最後に全員で二礼二拍手一礼をして、儀式が終了した。
「ちょっとまった。これじゃあ。あんたんちの神様を祀っているみたいじゃない。」
「もしかして、気づかなかった?その通りよ。御札でなく、悪霊をぬいぐるみに定着させた時点で、神棚の必要性自体が無いじゃん。それでもあの神棚に私がこだわったのは、そういうわけよ。」
「何で、あんたん家の神を私のウチで祀らないといけないのよ?」
「だって、しばらく、ここを拠点として使うつもりだから。」
「はあい?」