ホームセンターにて
神園は高級車に乗れる誘惑に負けて、須王寺月見と真田をホームセンターに連れてきた事を後悔しつつあった。最近、臨時収入があったので、懐の金で買えない額ではないが、自分は国民年金を1年8ヶ月ほど、未納している。そろそろ支払わないと支払い不能の未納期間が発生する。それに保険である。こんな職業。保険の更新はしっかりとしておきたい。そろそろ、自動引き落としとはいえ、貯金残高がやばい状態である。それに今後の食費や家賃を考えると、必要なものがいっぱいある。
「神園様。私の記憶では、私どもから支払われた代金と同等の額。今であれば買えない商品ではないかと。」
真田が紳士的口調で神園に提案する。
「ええい。どこぞのネズミ講商法か。そっちが支払った額と同等の額の商品購入をしないと、上のクラスになれないみたな。」
「失礼な。私どもは善意でもうしているだけで。」
「どこが、善意なんだよ・・・。鬼退治と恐竜捜索協力の併せての額より多いじゃん。」
「ここ、しばらくのバイト代も合わせれば、100円ぐらい残るかと」
「おいおい、そこまでむしり取るつもりかよ。」
「そんな、私どもを守銭奴の様に。言って起きますが、この神棚を買っても私どもには一円も入ってきません。」
「だったら、この1980円でいいだろう。」
「いえいえ。やはり、アマテラス様や、ここいらの地域の神は抑えておくべきかと。」
「一緒にいれときゃいいだろ。御札なんだし。」
「そんな、せっかくですし。それに、社が5つもあれば、あなた様の御祖先も氏神として専用社でまつれますし。」
神園は何でこの二人がこんなに食らいつくのか理解ができなかったが、とにかく論破しなくてはならない。
「あのな。もし、私が買ったとしても、あの家のどこに置くんだよ。あのデカイ神棚を置くスペースなんてないぞ。」
「大丈夫でございます。あの神棚は分解が出来ますし、しかも、あなた様の家には確か6畳のお部屋が」
「おいおい、何で家の中に入ってないのに、私の家の間取りを知っている。」
「それは、大事なお嬢様がどうしても、あなた様のお家に行きたいと申しましたので、あんたのお店の店長を使い極秘に調べさせたのでございます。」
「あの店長、途中でいなくなったと思ったら・・・。そんな事をしてたのか・・。ん?て、事はあそこにかなり強力な悪霊が居る事は分かっていたわけだよな。」
「いいえ。恥ずかしながら。そこまで調べる余裕はなく。うかつにも、お嬢様を危険にさらす事になっていたとは、この真田、切腹ものでございます。」
「あ、っそう・・・・。おたくらの事情はこの際どうでもいいや。ひとまず、こっちを。」
神園が1980円の神棚に手を伸ばすと、真田が神園の手首をものすごい力つかみとめる。
「なりませぬ。神園様。何卒あちらを。」
「あんなでかいのを、どうやって設置するのよ。あれって、桑でしょ?軽く100キロはあるわよ。あそこは借家なの。しかも、敷金払って無いから、穴とか開けたら、多額の修繕費とられるわよ。」
「設置については、お任せを。こう見えて木造建築士の資格を。」
「そんな問題じゃない・・。」
「修繕費については、我々、須王寺家が総力をあげて、請求させないように。」
「まてまて、法的にアウトと主張されれば、結局私が払う事になじゃない。」
「ワガママでございますね。」
「どっちが・・・。」
真田と神園が話している間、月見はどこかに行っていたらしく、二体の熊のぬいぐるみを抱きしめてかえってきた。
「ねぇえねぇえ。真田。これカワイイでしょ?買って良い?」
真田はにこやか笑顔になる。
「はい。よろしゅうございますよ。」
「ところで、あなたあの一番上の神棚買う事決めた?」
「買わない。そんな無駄金を買う余裕はない。」
「もう。仕方ないわね。私が出すわよ。」
「はあ?何でそうなるんだ?」
「私からの引っ越し祝いという事にしといてよ。」
「ありがた迷惑以外になにものでもないのだが・・・。それに、あんたらが金を出すといっても、あんたの車じゃ積めないでしょ。」
「そこらへんは大丈夫でございます。このお店は1000円以上の大型商品を買えば軽トラックを貸していただける事になっているので。」
神園は観念する事にした。