ホームセンターにて
「あのう?ひとまず、どうするんですか?」
ひとまず、掃除を終わらせ帰りたい美由は、神園にそうたずねた。
神園は一瞬、にらみつける様に美由を見るが、すぐに表情を戻す。
「まず、こいつ等を追い返して、ほら、あんたの学校をちょっと先にいったら、ホームセンターがあるじゃない?あそこで、適当に神棚とか『かみしろ』になりそうなモノを購入して・・・・。」
「ええぇえ。ホームセンター。私も行きたい。」
ホームセンターの単語を聞いた月見が子供がダダをこねる様にそう言った。
「やかましい。ホームセンターなんて、あんたの様なお嬢様が行く様なところじゃないわよ。」
「行くの!行くの!」
「ええい。やかましい。子供か?」
「あのー。悪霊を神様にするんですよね?そういう道具をホームセンターで調達するって大丈夫なんですか?」
「大丈夫、大丈夫。私はそういう事が専門だから。」
月見は美由と神園のやりとりで、何か思いつき、自分が乗ってきた高級そうな黒塗りの車の方へ手招きをする。
「そんなあり合わせのモノ大丈夫なんですか?」
それに気づかず、美由は会話を続ける。
「大丈夫だって、専門家の私が言っているじゃない。」
車から運転手が降りる。
「何か信じられないというか・・・。」
美由は運転手が車のドアを閉じた音に気づき、そっちへ視線を移した。
50歳は過ぎているであろう、半分、白髪が混じり、立派に手入れされた髭をもつ男性が三人の元へとやってくる。
美由と神園の視線はその男性に釘付けになる。
月見はニヤケ顔で、その男性を見ている。
「どうなされました?月見お嬢様?」
髭を蓄えたその男は月見に向かいそう言った。
月見は男性の横へつき、彼の耳元に手をあてコソコソ話をする。
美由と神園はその光景を見ていた。
「わかりました。お嬢様。」
「よろしい。」
月見は威張った感じになる。
「こちらのダンディーな男の方は、私の運転手であり、ボディーガードで、先生の真田さん。」
「初めまして。」
美由と神園は、真田の発するダンディーな感じに圧倒され、思わず会釈した。
「体つきは、そうは見えないけど、真田さんは結構な力持ちなのよ。ホームセンターは男の世界、やっぱり殿方がいた方が何かと便利だと思うのよ。」
「いや・・・。」
神園はそんな重たいモノを買う予定は無かったので、すぐに否定しようとしたが、月見がその言葉を遮る。
「それに、荷物を運ぶのであれば、車があった方が便利じゃないですか。」
「いや。金持ちの高級車を傷つけた場合の金銭的負担の方が、遙かに金がかかるから、遠慮してお・・・。」
「いえいえ。そんなの気にしませんわよ。ねぇえ真田。」
「もちろんでございます。大事なお嬢様のお客様にそのような事など。」
「あら、そう?」
神園は美由を見る
「で、どうする?」
「わ、私に聞かないで下さい。」
「じゃあ、決まりね。」
「わぁあ。この一番上にある神棚にしましょう。」
4人はホームセンターの神棚コーナーにいた。
何故かは分からないが、このホームセンターには巨大な神棚コーナーが作られており、200種類ぐらいの神棚が陳列されていた。
その中で明らかに、売る気は無いが客寄せのために置いている、50万円ほどする、横幅3.5メートルはあり、社が5つある神棚の事を月見は言っていた。
「ここにある中で唯一のメイド イン ジャパンよ。しかも、素材はガジュマルよ!桑よ!」
「ハイハイ。そんなのはいらないから。」
一番高いものに瞳を輝かせる月見を神園は制止する。
「だって、格好いいじゃない。」
月見は食い下がる。
「私もそう思います。」
月見の発言に運転手の真田も同調した。
「あんたらねぇえ。私が今の店でチーフ待遇でフルタイム働いて、月20万に届かないのに、それを買えるとリアルに思っているの?」
「飲まず食わずならば、3ヶ月も我慢すれば。」
「そんなの出来るか。と、言うわけで、こっちの1980円の社で」
「こんなのヤだ。ヤだ。あの、一番上のがいいよー。だって格好いいもん。」
「買えるかあんな高いの!」
「神園様。あなた様が買おうとしている社は1つしかありません。でも、お嬢様がねだっているのは5つも社が・・・。」
「ええい。私はアマテラスや、ここら辺の地域を管理している神を祀る気はないのよ。」