美由の部屋と神園家
「あら。おかえりなさい。」
物置として造られた小さな部屋に、第二次世界大戦以前でもレトロな赤いドレスを着た女が、せんべいをかじり、大きな黒犬の腹を撫でながらそう言った。
「あのー。あなたは何をしているので?」
美由は自分の寝床が敷かれる予定の場所で、リスの様にせんべいをかじっている女にそう言った。
「失礼ね。せっかく、棲む家が決まったんで、報告しに来たのに。」
「へぇえ。全く興味が無いので帰って下さい。」
美由は冷たい目線を神園に送った。
「そんな、つれない事言わないでよ。久しぶりに屋根がある所に住めるのに。この喜びをあなたもわかちあいなさい。」
「へぇえ。では、勉強があるので。即刻お帰りを」
「そんな冷たい。こういった話を聞くのも大人のたしなみよ。」
『う、痛い』
「で、何処に家を。」
「あなたの学校の近く。しかも、一軒家。」
「へぇえ。それは凄いですね。」
「何と、敷金礼金無し、身元保証も無しで月1万よ。」
「はいはい・・・。へ?敷金礼金無しの身元保証も無しで一万?幾らなんでも怪しすぎませんか?」
「怪しいでしょうね。」
「お化けとか出るのでは?」
「不動産屋は出るとか言ってたたわね。てか、一年ぐらい前に首つりで新聞に載った有名スポットらしいけど。幾人もの強者が挑戦したけど、みんな数日せずに出ていったそうよ。」
「っへ?そんな場所がウチの学校の近くに・・。」
「知らないのか。世情収集を怠っているからよ。」
「そんな場所に棲んで大丈夫なんですか?」
「大丈夫なわけないじゃん。だから、あんたを呼びに来たのよ。」
「はぁあい?」
「前も話さなかったっけ?悪霊の対処法?」
「悪霊の対処法ですか?服についた悪霊は洗濯機に放り込めば大抵除霊が出来るとしか・・・。」
「合格、そういうわけよ。」