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朋と美由と桐野

 雨が降る、学校の校門前で、桐野と美由は傘をさし一緒に歩いている処を、美由は朋に突然抱きつかれていた。

 美由は少し、『邪魔くさいな』と思ってしまった。そう思った次の瞬間には、自分が今、思ってしまった悪意に後悔してしまう。自分の中で起こった悪意を飲み込み、対応する事にした。

 「どうしたの?朋ちゃん。」

 朋は顔を上げる。

 「美由せんぱいと一緒にいられる様な大人にならなきゃと、ずっと思ってたのです。でも、頑張っても、頑張っても全然駄目なのです。」

 美由は自然と朋の頭を撫でる。

 「そっか。」

 『この子は、私と同じなんだ・・。』

 美由は朋の頭を撫でながら、大人になりたいのになれない自分と重ね合わせた。

 「そこのちびっこ。あなたは多分、凄く幸せよ?」

 朋は桐野の方を向く。

 「どうしてですか?」

 「あなたぐらいの年齢で、大人になろうと努力して、もがく経験をする事はとっても幸せな事だと、私は思うから。」

 「良くわかりません。」

 「今は判らない方が良いのよ。」

 「ぶー。教えて欲しいのです。」

 「駄目(だぁあめぇえ)。 でも、一つだけ良い事を教えるわ。あなたが抱きついている桜間さんも、ほんの数分前まで同じ事で悩んでいたわよ。」

 「美由せんぱいもですか?」

 「桐野さん・・・。」

 美由は桐野を制止しようとする。

 「そうよ。」

 桐野は美由を無視する。

 「あなた、桜間さんに憧れているんでしょ?」

 「はい。もちろんです。」

 「だったら、頑張って、もがきなさい。それが大人になるって事だから。」

 「あうー。良く分からないのです。でも、頑張ってみるのです。」

 「よし、良い子だ。」

 美由はこの時、この二人に自分は一生勝てないと思った。




 三人は歩き始める。

 「ねぇえ、そこのちびっ子。」

 口火を切ったのは桐野であった。

 朋は桐野を見る。

 「1+1は幾つ?」

 桐野の突然の言葉に朋は戸惑った。

 「2です・・・。」

 「じゃあ、2+1は?」

 「3です・・・・。」

 「それじゃあ3-1は?」

 「・・・・・・・。2です。」

 「正解。でも、1+1は、田んぼ田という人は意外と多いって事は覚えておきなさい。」

 「あうー。小学校の時、良く、その質問されたのです。」

 「でもね?『1+1は』では、田んぼの田にはならないのよ。」

 「え?どうしですか?」

 「『=』(イコール)と『()』とは違うからよ。『()』は答えを求めているけど、イコールは答えではなく、左の式と右の式は、同じ値である。って、意味だから。「『=』(イコール)と『()』は同じ様に見えて、少しだけ見方を変えれば全く違ってくるのよ。よって、『一 足す 一 は』は、『1 プラス 1 イコール 』とは違うのよ。この事に気づかないと、小学校5年生だっけ?一次方程式で確実にコケるわね。」

 「なるほど。」

 「不等式あたりになってくると、『=』(イコール)は答えを求めるという概念から外れて、左の式と右の式と同じ値であるという使い方の方がメインになって、それを最大限に活用する嫌らしい考え方を持たないと問題が解けなくなってくるでしょ?『=』(イコール)一つをとってみても、幾つも違う見方というのがあるのよ。大抵の物事は見ている視点によって違うという事を理解しておきなさい。」

 「はーい。」

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