学園についたが、猫がいない。
美由は、傷だらけの黒と共にウサギ主にまたがって、学園を目指していた。
ウサギ主の荒い走りにも、次々と迫り来る杉の柱にも慣れ来ていた。
「ところで、猫よ。魔法少女の居場所が良くわかったな。お主の縄張りから随分離れているというに。」
「ああ、猫には独自のネットワークがあるんですよ。我々は縄張り争いでいつも反目し合ってますが、争っているだけではお互いが疲弊するだけですし、相手側の情報が入って来なくます。情報が入って来なくなるというのは、近くに危険が迫っているのに縄張りの外だから、その情報が手に入れられなくなります。だから、裏で繋がりを持ち、情報を共有してるんですよ。」
「猫は複雑だのう。」
「魔法少女は我々にとっては危険要因ですから、彼女には常に目を光らせているんですよ。だから魔法少女の情報は簡単に手にはいります。」
「私って、猫に監視されてたんですね。」
「お気づきになってなかったので?」
「通学路で良く、猫は見かけてましたけど・・・。」
「多分、それはただの普通の猫でしょ。あなたは、存在を薄める事に安心して、その他の事に気を配らないから、見つかった事は無いと言ってましたし。」
「そうなんですか・・・。」
「そんな事より、もうすぐ学校だぞ。」
ウサギ主は、杉林から車が一台通れそうな道路へと出る。学校の裏にある坂道だ。急坂に強引に民家が密集して建っており、何軒かの家には明かりがついている。
この先に確かに学園はあるが、この道からだと、崖沿いに沿って学園を半周程回る必要がある。
ウサギ主の足は止まらない。目の前には転落防止用のフェンスと崖がある。
「ちょっと、ウサギ主様。目の前は崖です。」
「飛び越える。しっかり掴まっておれ。」
「うそ・・・。」
美由はウサギ主に体を密着させ、毛をしっかりと握る。ウサギ主は加速をつけ、ジャンプをし、フェンスを超え、崖下へと落ちていく。
崖は5mほどであったので、落ちるのは一瞬のはずだが、美由には1分ぐらいに感じた。
学園の裏庭へと無事に着地するが、その時、物凄い振動が起こった。
「さて、ついたぞ。その猫は、どこにいる?」
「中庭の方にいるはずですが。」
そう、傷だらけの黒猫が言っている最中に、何かが近寄ってきた。猫だ。
黒猫はウサギ主の背中から降り、現れた猫と何か話しをはじめる。
そして、二人の方を見る。
「まずい事になりました。今から5分程前に暴走がはじまった様で、そこにたまたま、三上の蛙主が居たようで、あの方を追って学園の外に出たみたいです。」
「何やってるのだあいつは。」
ウサギ主はため息交じりに言う。
「どうも、まだ、追いかけっこをしているみたいです。急ぎましょう。」