表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/270

恐竜と神園

 月見達の集団は、町中をぐるぐると回り、美由達の学校の近くまで戻ってきていた。

 「ねぇえ学校に戻ってきたわよ。本当に大丈夫なの?」

 先頭から二番目を走る月見が、すぐ後方を走っている神園にそう言った。

 「メリーの鼻は確かだよ。臭いを見失ったそぶりもないし、恐竜が前に通ったルートとも重なって無いし。」

 「なら良いんだけどね。」

 「なあ。後ろのやつらさ。邪魔だから帰って貰うわけにはいかないか?」

 「何でよ。」

 「いや、正直、こんな緊急性の高い仕事で、これだけ積極性に欠けているとなると、足手まといにしかならないというか。」

 「失礼な事を言うわね。これでも、新進気鋭のエリートを集めた精鋭部隊なのよ。」

 「新進気鋭のエリートねぇえ。今の処、まともな仕事をしている処を見てないだがなぁあ。処でさ。一つ聞きたいんだが、いいか?」

 「何よ。」

 「えっと、恐竜を何が何でも叩きのめしてから、捕らえないと駄目なのか?」

 「はあ?言っている事が良くわからないんだけど。」

 「いや、一時間ほど前に恐竜と出くわしたとき、あの恐竜は明らかに怯えていただろ?それに、向こうからこちらに攻撃してきてもいない。ただ、ひたすら、私達から逃げているだけだ。」

 「そうね。でも、一般人二人を襲おうとしてたでしょ?」

 「そうか?あの二人はあの恐竜が見えているのに、逃げようとしなかった。私達がすれ違った時も随分と余裕がある顔をしてたぞ。」

 月見はバス停のいすに座る二人を思い出す。確かに怯えている様には見えなかった。

 「それに、言葉をしゃべっていただろ?」

 「日本語をしゃべっていたわね。それが何?」

 「いや、わざわざ、叩きのめさなくても、話し合いで解決できるんじゃないかと思ってな。」

 「それも、そうね。でも、私達、結構酷い事をしたから、多分、信じないかもよ。」

 「だよなぁあ。」

 『風が出て来たな。早くしないと雨が降ってくるな。』





 恐竜になったハヤブサは、校門の前で倒れていた。

 「疲れたでやんす。もう、動けないでやんす。あっしは、このまま、あの怖い人達になぶり殺しにあうでやんす。」

 風は止み、雨がしとしと落ちて来て、恐竜の体にあたる。

 「あのー。」

 誰かが、声をかけてきた。

 恐竜は目を開ける。

 そこにいたのは、美由だった。

 「あ、姉さん。助けに来てくれたんで?」

 「いいえ。」

 「そうですか、そうですよね。あっしもここで年貢の納め時でやんすね。」

 「そんな死ぬみたいな。」

 「いえいえ、あっしを襲ってきている怖い方々にリンチされ殺されるんです。」

 「あの、その事なんですけど、彼等に素直に捕まって貰うわけには行きませんか?」

 「あっしに死ねと?」

 「そうじゃなくて、私が仲介に入って、彼等と話合いますから、素直に捕まっていただければ、多分、攻撃を受ける事は無いと思うんですよ。」

 「なるほど、で、捕まった後、あっしはどうなるんで?」

 「分かりません。でも、酷い目に遭わさないように必死にお願いしてみるつもりです。」

 「そうでやんすね。姉さんだったら、この身を預けても良いです。」

 「すいません。」

 「姉さんが謝る事じゃありませんよ。」



 雨降る道路の向こうからメリーが駆けてくる。

 その後ろから、月見と神園が姿を現した。

 「あんた。」

 美由は恐竜の背中をさすりながら言う。

 「すいません。この恐竜さんに酷い事しないでいただけますか?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ