恐竜を見失う。
時は少し戻り、月見と神園は恐竜を追いかけていた。
二人は当然、存在を薄めて走っていた。
「なぁあ。本当にこっちなのか?姿を見失ってしまったけど。」
神園は全くやる気が無いので否定的な意見が口から出る。
「さっきから五月蠅いわね。私の感がそうだと言ってるんだから、間違い無いわよ。」
「・・・・。」
『ま、いいか、見つからなきゃそのうちあきらめるでしょ。』
二人は国道の歩道を仲良く走り続けた。
すると、バス停に微かに光り輝くデイノニクスがいた。
「ほら、見なさい。いたわよ。」
「なあ、あの恐竜の前に誰かいないか?」
人より少し大きいその恐竜の前には二人の女子高生がいた。
「もしかして、あの恐竜、見えない人間を襲って食べようとしているの?」
二人は加速する。
恐竜は、バス停で座っている二人を襲う事なく、その場から逃げ出した。
「良かった。襲われなくて・・・。」
「ねぇえ。あそこに居る二人さ。ハンバーガー屋にいた、あんたの姉の友達じゃないか?」
「あら、本当ね。ひとまず、彼女達は無視するわよ。どうせ見えないんだし。」
「あんた忘れたのか?一人は確実に見える目をもっているんだが・・。」
「む、無視よ。今は見える人間を気にするより、恐竜が誰かを襲う前に何とかする方が先。」
「まあ、それには異論は無いが。」
神園と月見は、バス停に座っている二人と目を合わさず、スピードを落とさない様に通り過ぎた。
横目で感じていたが、明らかに二人の視線は自分たちを追っていた。
「二人とも見えてたな。」
「五月蠅いわね。もう一人も見えていたという事は、もしかして、あんたちゃんと消えてないんじゃないの?」
「そんなわけあるか。見つかると色々とめんどくさいのに。」
美由は恐竜や月見達を追いかける事なく、桐野と共にバス亭の椅子に座っていた。
恐竜を追いかけているのが神園だけなら追いかけるだが、月見もいたし、自分の隣には桐野がいる。とても、魔法少女に変身して追いかけられる状況ではなかった。
身動きがとれない状況にあるのでそこで色々と思案を巡らせていた。
あの恐竜は、昨日のハヤブサだと主張していた。
白い石を触ったら、恐竜になったという。
美由はその石に心当たりがった。「神石」である。
だが、神石は発動条件がきつく、普段はただの石である。
「神石」の力をいつでも引き出せるのは、ここいらでは蛙主だけだ。
たまたま、神石の発動条件がそろった瞬間に触った可能性も捨てきれないが、それにしては、肉体が安定し過ぎているし、暴走している気配もないし、ちゃんと意識を正常に保っていた。
少なくとも美由が知っている、神石による暴走とはタイプが違うのは分かった。
『後で蛙主にでも聞こうかな?』
「恐竜の事や、それを追いかけていた二人の事は、須王寺さんには伝えた方がいいのかしら?」
「二人の人が追いかけていたのは見えましたけど、シルエットがそれっぽいだけで、確定ではないので黙っていた方が・・。」
「そうね。でも、私達見えるわけじゃん。手伝えないかな?」
「どっちをですか?恐竜は私達に助けてを求めていましたしたけど。」
「それは思案のしどころねぇえ。ひとまず、あの恐竜の意見をきかないと。」
「シロートがあまり、手を出すべきじゃ無いと思いますよ。」
「あ、バスが来た。」