恐竜との追いかけっこ
月見と神園と大きな黒犬は学校の裏庭近くまで来ていた。
神園は月見に腕首を強くつかまれ、強引に引っ張られる様に付いてきた。月見の手には木で作られた槍が握られている。
「ねぇえ。思うんだけど、私、いらなくない?」
ハンバーガー屋の制服まま引っ張り出された神園がそう言った。
「文句を言わないの。」
「だって、私が来た時には既に鬼は倒れていたんだしさ。」
「私だって、良く分からないけど、部隊長代理が、この学校の調査がどうしても必要だって言うから、それだったら、少しでも現場が分かる人間がいた方が都合がいいでしょ?」
隊長代理の考えでは、むしろ神園の存在は不都合であったが、月見に提示されている材料で判断するのであれば神園はどうしても必要な存在であった。
「確かにそうかもしれないけどさぁあ。別にこんなに急いでこなくてもいいじゃん。私が着替える時間を確保してくれたっていいじゃん。」
「あんな、半世紀前でもクラシック扱いされる服より、そっちの方が良いわよ。」
「失礼ね。あれは100年前にパリで造られた立派な魔法防具よ・・・。って。」
神園は何か不可思議な感覚に駆られた。
「あんなボロで普通に着て恥ずかしい服なんか、誰も、盗まないわよ。あの店は24時間営業だらから後で取りにいけば、問題ないで・・・って、何?」
月見が掴んでいる神園の手が少し抵抗している様に感じた月見は、彼女を見た。
神園は普通の感覚では予測できない不思議な方向に指を指し、月見はその先へと顔を向けた。
「ねぇえ。あの大きな青白い光、何かしら?」
その先には確かに、青い球体が輝いていた。その球体はすぐに光りを失い、その光から飛び出した微かな光を放つものが、徐々に上に上がっていく。
「UFO・・・・?」
「それにしては、高度が低すぎないか?そこにある崖を這い上がっている様にしかみえないが・・。」
「う、五月蠅いわね。あ、あなたに、言われるまでもありませんわ!」
月見は恥ずかしそうにそう言った。
「議論は良いから、急いだ方が良くないか?」
「わ、わかってるわよ・・・」
二人は走り出す。彼女らがその物体を見上げられる位置に来た時、その物体は崖から飛び降りて来て、彼女達の目の前に着地する。
「そこに居るのは月見様でしょうか?とにかく、それを捕まえて下さい。」
隊長代理らしき声が聞こえた。
神園は状況が飲み込めず、オロオロしていた。
月見は片手に持っていた木の棒に念を込める。
「うひゃ、こんな処にも怖い方々が・・・。」
微かな輝きを放つ『それ』から声が聞こえてくる。
『ん?声?』
神園はそう思った。
次の瞬間、月見は微かな光を放つモノに対して、木の棒を振るう。
微かな光を放つモノは、ダチョウの様に翼らしきものを羽ばたかせ、逆方向へ逃げていった。
「ほら、あんたも追うわよ。」
「ええ。金も発生してないのに、何で私が。」
「五月蠅いわね。正規料金程度は払うわよ。」
「それでも、相手にしたくないぐらいのデカさなんだけど。」
「文句は言わない。」