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髪の話題

 須王寺月見にとって、ハンバーガー屋のバイトは完全な暇つぶしであった。

 鬼の事件の調査をしている過程で、どうしても美由達が通う学校を調べる必要性が出て来ており、大人数で調査する必要があった。

 幾ら彼等に消える能力があるとはいえ、昼間の学校に大人数で押しかけ調査するのには問題がある。そのため、夜になるのを待って調査する事にしていた。

 そんな時、調査現場近くに自分の家が出資しているハンバーガー屋が本日オープンだという。人手が足りなかった事と、この店のカワイイ制服を着たいという憧れがあったので、月見は夜までの暇つぶしにバイトをする事にしたのだった。

 学校に行っても問題無かったはずなのだが、あまり勉強が好きではない月見は刺激を求めてバイトを選んだのだった。


 だから、姉の隣に座ってガールズトークを繰り広げるという魅惑的なものがあったら、バイトを捨てて、そっちに飛びつくのに何の躊躇も無かったのだった。



 「月見さんって、ほんと、麗菜さんを中学生にしたらこんな感じだろうなって感じでカワイイわね。」

 桐野がそう言った。

 「えへへ。」

 月見は麗菜の隣で恥ずかしそうに照れ笑いをした。

 「そんな事は無いですよ。姉は中学生時代ですら、もっと大人な感じでした。それと、私達って一つ違いなんですよ?姉はこんなに大人っぽいのに、私は子供みたいで・・。」

 「ああ、気にしてたならごめんなさい。大人っぽい女性も良いけど、子供っぽい女性も魅力的だと思うし。」

 「いいんですよ。気にしなくて。」

 子供の様な態度で笑う月見を見て、美由は思う。

 『二日前の夜は、あんな威圧的で高飛車な感じの人だったのに・・・。人ってこんなに変われるんだな・・・。姉パワーおそるべし。』

 「姉と私って、顔は似ていると言われるんですけど、結構違うんですよ。髪とか。」

 「へぇえ。私には同じ様に見えるのに。」

 「それは、私がパーマとかかけて姉に似せているだけで、本当はもう少しストレートな感じで。」

 「ええ?そうなの?」

 と、麗菜が驚いた。

 「ねぇえ様知らなかったんですか?」

 「初耳。私、自分の髪のこのウェーブが実は嫌で・・・。」

 「何で何で?」

 桐野が前のめりに聞く。

 「だって、頭が大きく見えるんですもん。一生懸命ドライヤーとブラシをかけてやっとこんな感じを保ってるんですよ。」

 「と、言う事は、ほっとくと、頭は大爆発してるのね。」

 「そうそう、寝起きの私とか他の人には絶対見せられませんわ。私としては桐野さんみたいな髪が良かったわ。」

 「私、そこそこボリューム感がある様にみえるんだけど、一本一本が細いから全然、髪であそべないのよねぇえ。逆に須王寺姉妹みたいに遊べる髪の方に憧れるわよ。」

 『みんな、それなりに似合っているのに、髪への憧れってあるもんなんだなぁあ。私は何となくこの髪型にしてるけど。私の憧れか・・・。私は朋ちゃんみたいな長い髪がいいなぁあ。」

 「ねぇえ。桜間さんって、どうしてその髪型にしてるの?やっぱり、魅惑的な女を狙ってセミロングにしてるの?」

 「え?私?ですか?そんなつもりは全く・・・・。」

 美由がセミロングなのは、美容師さんに適当に切り添えて下さいと言ったらこの髪型にされるからなだけで、意味は全くなかった。





 月見はあくまで、夜までの暇つぶしでバイトをしていたが、神園は違っていた。

 最近、お金が入る事件が幾つかあり、今は金があるのだが、彼女にとっては贅沢な、アパートを借りて生活するとか、コンビニでご飯をすますとか、愛犬のご飯を缶詰にするとか、水道・ガス・電気を払うとか、バーゲンで服を買うとか、未納分の年金を払うとか、保険に入るとかいうとてつもない贅沢をしていれば、半年を過ぎたあたりで飯が食えなくなる。

 月見が提案してきた雇用条件はフロアチーフ待遇であり、ちゃんと働いていれば、彼女の尺度的に見ればかなり贅沢な生活が出来る様になるのだ。

 だから、必死で働いていた。

 神園は退魔師業で食えなくなると、バイトで何とか食いつないでいたのでバイト経験は豊富で、この系列のハンバーガー屋でバイトをした事があり、チーフまでなった事がある。ただ、それは随分昔の話であり、今とはかってが大夫違っていた。

 月見は神園を調べ上げており、チーフ経験があるんだからとチーフ待遇で雇っても問題はないと言っていたが、彼女的に問題があると感じていた。

 月見の姉話につきあわされたすぐ後、オープン数時間前に接客法やレジの使い方を習いオープンを迎える事になる。我ながら良く、そこまで大きなミスを犯さずにやれてるなぁあと思う。

 昼になり店長に呼び出され、チーフ待遇なんだからという理由で、月見を押しつけられるハメになった。月見の指導をしながら、押し寄せる客をさばくので、途中キレそうになった。




 「あら?月見?一緒に帰らないの?」

 麗菜は自分の妹にそういった。

 宿題があらかた片付いたので、3人は帰ろうとしていたのだ。

 「ええ。ねぇえ様。今日は、他にも別の用事がありまして・・。」

 「そう、せっかく車の中で楽しくおしゃべりをしながら帰れると思っていたのに。」

 「ねぇえ様。ごめんなさい。私もそうしたいのだけど。」





 客が引く時間帯になったので、神園はテーブルの掃除を一生懸命していた。その瞬間、何者かが神園の襟首をつかんだ。

 「な、なに?」

 「ほら行くわよ。」

 そう言ったのは月見だった。彼女の襟首をちからいっぱいに引っ張り、神園の体を引きずる。

 「ちょ、ちょっと、まって、まだ、私仕事中・・・・。」

 「そんなのは、いいの。こっちの仕事の方が重要だから。」

 「ま、まって、店長に説明する時間と、タイムカードを押させて。」

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