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ひたすら勉強を続ける人たち

 須王寺月見は、目の前で展開されている異様な光景を見て、少し引いてしまった。

 目の前では、制服を着ていても華やかさが溢れ出る女子高生3人組が、鬼の形相をしつつ、無言でプリントに食らい付いている姿が、そこには、あったからだった。

 『せっかく、ねぇえ様に甘えられると思ったのに、何? この暗いピリピリムード・・・。』

 満面の笑顔でバーガーが入ったバケットを持ってきた月見の表情が曇った。

 『えっと・・。こういう店で友達と宿題をするのって、『宿題』はあくまで言い分けのための『大義名分』であって、実際は宿題そっちのけで、ガールズトークを展開するものよね?』

 月見が姉ラブなのに関わらず、姉を追いかけずに今の学校に残ったのは、家の事情で公休を取り易い面もあるのだが、何より勉強漬けの高校生活がイヤだと思っていたからだった。

 彼女の世界観からすれば異様な光景としか思えないピリピリムードであったが、美由達3人にしてみれば当たり前の状況なので、自分たちが異様な世界観を作り出しているとは思っていなかった。

 高校レベルでの難しい問題というのは、大抵の場合は単純な問題が複数個組み合わさっており、それをひとつひとつ正確に処理して、はじめて解けるようになっている。

 だから単純なミスを一度でも犯したら致命的になるのだ。

 そのため難しい問題を解くためには単純なミスをどれだけ減らせるかが勝負になってくる。

 単純なミスを減らすため、問題に取りかかっている間は余計な情報を排除していくいくのが一番効率が良いのだ、

 だから、この三人組はしゃべらずに宿題に集中しているのだった。



 ただ、須王寺と桐野は別に会話をしながらでも、宿題をし続ける事は可能であった。

 ただし、美由にはそれは出来なかった。


 それはマルチタスクという能力のせいである。

 マルチタスクというのは複数の事を同時に考える事ができる力だ。

 マルチタスク自体は特別な力ではなく、誰でも自然に持っている力だ。

 例えば、TVを観て、音楽を聴き、家族と会話しながら宿題をするという様な感じだ。

 須王寺はこのマルチタスクの能力が強く、桐野も高い方だった。だから、この二人はTVを鑑賞しながら、音楽を聴き、会話をしながらでも宿題が出来る人たちだった。

 だが、美由はこのマルチタスクが全く出来ない体質だった。

 「あら。」

 バスケットを持ってきた月見に最初に気づいたのは、姉の須王寺麗菜だった。

 「月見が持ってきてくれたのね。ご苦労様。」

 さっきまで鬼の表情でプリントに向かっていた麗菜は、もの凄く優しい顔で月見にそういった。

 須王寺は机に置かれている番号札を取り、バスケットを受け取って、番号札を渡す。

 「ねえ、須王寺さん。」

 プリントから一切目を離さずに、桐野がそう言った。

 「その子、私達にも紹介してよ。」

 そう言った後、鉛筆を置き、須王寺姉妹を見た。

 「ええ、良いわよ。こちらが私の妹、須王寺月見で、こちらの方が桐野さんで、こっちが桜間さん。」

 「二人とも、はじめましてよろしくお願いします。」

 月見は慌てる様に会釈をする。

 『はじめまして・・・?私とは二度目だけど、まあ、ようするに、そうしろと・・。」

 「こちらこそはじめまして。月見さん。私は桐野舞奈よ。」

 「はじめまして、須王寺さんに似て、凄く綺麗な妹さんですね。」

 「よくよく見たら、須王寺さんより背が低いのね。それとキャシャというか・・・。顔立ちは似てても結構違うのね。綺麗というより、可愛いって感じかしら?」

 「ええ?そうですか?」

 月見はちょっと照れて、姉の隣に座ろうとするのだが、麗菜がすぐに止めた。

 「駄目よ月見。座っては。お店に迷惑がかかるでしょ。お客様がいるテーブルの席にお店の人が座ると、風営法という法律にひかっかるの。お話したいのなら、バイトが終わってから、その制服を脱いでからにして。」

 「はい、ねぇえ様わかりました。」

 そう言って、月見はトボトボと帰って行った。

 「お客様がいる席に座ると、風営法という法律にひかっかるって本当なんですか?」

 「そうよ。メイド喫茶でも、結構そこらへんは厳しく指導しているみたいよ。やるんだったら警察に届けて、18歳以上立ち入り禁止の札を店の入り口に掲げなきゃいけなくなるみたいよ。」

 桐野がそう言った。

 「でも、前に、テレビで、ボリューム満点の女性が露出度の高い服を着て、客と同じ席に座って会話するのがウリのファミレス特集とかしてませんでしたっけ?」

 「さあ、気のせいじゃない?、私も同様の事を思ったけど。でも、この前、その店を特集してたけど、お客様の席に座って会話するというのはやってなくて、何かショーをやっていたわよ。多分、勘違いじゃないかしら?」

 「立ち話で、少しの間会話するのは問題無いから、そこら辺で勘違いなさったのかもね。」

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