バーガー屋
「あの?何をしてるんですか?」
美由はハンバーガー店のカウンターでレジをしている神園にそういった。
「お客様?何にしましょうか?」
神園は引きつった声でそういった。
「月見。あなたここで何をしているの?」
須王寺麗菜は目の前に立っている自分の妹に怒りをこめた大きな声でそういった。
美由も神園もその強い声がした方へ顔を向けた。
『あれ?確か、彼女、須王寺さんの妹さん・・・。で、こっちは退魔師の人。』
美由は突然の二人との出会いに動揺し、オロオロしていた。
「ねぇえ。あの須王寺さんにそっくりな顔をした店員だれだろうね?妹さんかしら?」
そう好奇心でわくわくした声で桐野は言う。
「え?え?多分、そうなんじゃないですかね?会話から推測するに。」
「あの、お客様。後ろが使えてますので。」
神園は美由に向かってそう言った。
「あ、はい。」
美由はカウンターにヒジをつき、メニューを見る。
「あの?ここで何を?」
美由は小声で神園に聞く。
「昨日、彼女の家に連れて行かれた後、バイトに誘われたから来ただけよ。」
「何で、ファーストフード店のバイトなんか。」
「あら?ここはファーストフード店じゃないわよ。注文を受けてから作りはじめるから。そんな事より怪しまれるからとっとと注文しなさい。」
桐野は美由と神園会話を全く気にしていなかった。
同じ顔の須王寺が二人、現れて、そんな事に気がまわらなかったのだ。
「月見、学校はどうしたの?それにこんな処でバイトしてるなんて。」
「ほら、姉様。ここはウチがフランチャイズ契約で出しているお店で、今日、人手が足りないって事だったんで。ヘルプに。」
「他にもうちには人手がいるでしょう。わざわざあなたが出る必要は無いでしょ。」
月見は顔を下に向けて恥ずかしそうな顔をする。
「だって、ここの制服可愛いですもん。こういう機会が無いと、コスプレ出来ないから。」
「気持ちはわかるけど・・・。確かに、私も着てみたいけど、あなたには学校があるわけだし。」
「それは大丈夫ですよ姉様。学校にはちゃんと許可をとっているから。」
「もう、仕方無いわね。今日だけは大目にみます。」
「ねえ様、優しい。」
月見は一度、美由と桐野の顔を見る。
「となりのカウンターで、興味深そうに私達を見ているそちらのお二人は、お友達ですか?」
「ええ。そうよ。今から3人で宿題をここでやろうと思って。」
桐野・麗菜・美由の3人は席に座る。
14番の注文札を机に置いた。
「ねぇえ。ねぇえ。須王寺さん。あの須王寺に似ている子だれ?」
「私の妹です。」
「やっぱり。」
「あのさ。あんた何やってるの?」
そう言ったのは神園だった。
彼女がそう言いたくなるのも当然で、テレビに映し出される監視カメラを食い入る様に見ていた。
「話かけないで、ねえ様の友達が、ねえ様にふさわしい人たちなのか、チェックしてるんだから。」
月見は姉ラブ過ぎて、レジの仕事を放棄していた。
「ふう。」
『私が言うのもなんだが、私の周りは変わり者が多いな。』
別のバイトの子が、キッチンで作られた美由達のハンバーガーやポテトが入ったバケットを、席までもっていこうとしていた。
今までモニターに釘付けになってた月見は、そのバケットをとりある。
「悪いけど、これは私が持って行くから。」
「え?はい。どうぞ。14番様です。」
取り上げられた女の子は月見の突然の行動にとまどいの表情をみせていた。
華やかな笑顔で、バケットを美由達の席へと運ぶ。
「14番でお待ちのお客様。商品はこちらになります。」
元気な声でそういった。