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魔法少女ガラミン  作者: からっかす
2話 猫たち
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傷だらけの猫との再会と依頼

 テラミルはウサギ主と共に、まだ、イメージ戦闘を続けていた。

 彼女は素早い足さばきを使いながら自分の体を左右に振り回し、ウサギ主の大きな懐に入り込み、左右のパンチを連続で打ち込むが、両前足のガードに阻まれる。テラミルが強いパンチを打ち込もうと大降りをした瞬間、横から、ウサギ主のフックが飛んできて、横に飛ばされるが、倒れない様に踏ん張り、何とか立っている事が出来た。

 「魔法少女よ、お前さん。攻撃に集中すると、滅茶苦茶、視野が狭くなるぞ。」

 「はい」という声と共にウサギ主の懐へともぐりこむ。

 そして、右のパンチを打ち込むが、前足ではたきおとされる。間髪入れずに左を打ち込み、それが相手の腹に当たる。更に右を繰りだそうとした瞬間、テラミルは突然、自分の足が無くなったみたいな感覚に襲われた瞬間、地面に倒れていた。

 ウサギ主が左腕を軽くひっぱり、足を払っていたのだ。

 「魔法少女よ。強くない相手ならイノシシの様にひたすら突撃でもかまわんが、ある程度、強い奴には、その程度の連続攻撃では勝負にならんぞ。」

 ウサギ主は倒れているテラミルを見下ろしながら、そういった。

 彼は何かに気づき、不信な表情を浮かべる。

 「誰か、来たみたいだ。ここを出るぞ。」

 「は、はい。」

 テラミルは息を大きく切らせながらそう答えた。

 『気配・・・。確かに何か近づいている。でも、こうやって感覚を研ぎすましているから判るけど、ウサギ主様は私との戦闘中に気づいた。こんなに差があるのか・・・。』

 テラミルがそう思っている間に、ウサギ主は現実の世界に戻った。

 テラミルも後を追うように現実の世界へと戻る。




 現実の世界へと意識を戻した美由は、正座をしたまま、気配の方へと顔を向けた。

 そこには昼に会った、傷だらけの黒猫がいた。黒猫は二人の元に歩み寄って来る。

 「お主、どこの猫だ?山を縄張りにしている奴等ではなそうだが?」

 そう、ウサギ主は切り出す。

 「はじめまして、ウサギ主様。私は街の方の猫で、街で一番、大きい勢力の使いっ走りをやっております。昼に、そこの魔法少女様とはお会いしました。」

 「あの噂の新しい魔法少女に関わった猫か?」

 「いいえ、私は、その猫を引き取っただけで。魔法少女とは、そんなに関わってはおりません。」

 「その猫が、他の猫の縄張りを越えてまで、ワシに合い来たのは何じゃ?」

 「いいえ、あなた様には、用はありません。私は、そこの魔法少女様に用があって来ました。」

 「私に、ですか?」

 「ええ、昼に私どもが、引き取った猫のことで。」

 「はい。何でしょう?」

 「まずい事になりました。どうも『 暴走 』が始まるみたいなんです。」

 「暴走ですか?」

 美由は正座をしたまま黒猫に聞き返す。

 「はい。それを、魔法少女である、あなたに止めて欲しいのです。」

 「ちょっと、()った。」

 ウサギ主が割り込んでくる。

 「猫には確か、猫の暴走についてのルールがあったはず。そのルールを守らず、何故?魔法少女に頼む。」

 「すいません。今回の件は、私が個人的に魔法少女にお頼みしているだけでなのです。」

 「化け猫社会のルール破りは、かなり厄介と聞く。この魔法少女が介入して恨みを買うのを見過ごしてはおけん。」

 「その点は大丈夫です。ボスには内密に話はつけてありますので。今回の件に介入しても問題はありません。」

 「だが・・・。」

 「あのー。すいません。猫社会の暴走についてのルールって何ですか?」

 申し訳なさそうに美由が聞く。

 「・・・・・。ふん。『 消滅 』させるのだ。」

 「消滅・・・。殺すって事ですか?」

 「まあ、そうとも言う。」

 「暴走を止める手段を持たない我々は、そうするしか無いわけですが、先日、魔法少女が特殊な力を

使って、相手を消滅させずに暴走を止めたと聞いたものですから。」

 「ああ、あれは、私だけの特別な力ではないですよ。私は蛙主にやり方を教えて貰ったので、やり方さえわかれば、出来ると思いますよ。」

 「そうなのですか?」

 期待を込めて、猫は美由に聞き返すが、ウサギ主がそこへ割り込む。

 「うんにゃ。あれは、誰でもは出来ん。細かい力の操作と強い魔力が必要になる。第一、あの方法で、は全ての暴走は止められんしな。」

 「そうなのですか。ひとまず、今は、魔法少女に頼るしかなさそうだというのはわかりました。」

 ウサギ主は話始める。

 「それより、お主、何故そこまでして、その猫を助けたい?」

 「幾つか理由はありますが、一番は、新しい魔法少女に『 酷い事はしない 』と約束したからです。私はどうも、あのお嬢ちゃんが苦手みたいで、約束を守れない事に後ろめたさがあったものですから。他にも、魔法少女と縁を作っておけば、後々、我々に有利に働く事もあるだろうというのと、魔法少女の強さというのを知っておきたいというのもありまして。もうひとつ、暴走を止める方法を、この目で確認したいというのもあります。」

 「なるほどな。」

 『何が「なるほど」なんだろう?』と、美由は思った。

 「要するに、この魔法少女を試したいという事か?」

 「そう、とって貰って構いません。」

 『試すも何も、私はただの小娘なのだが。』

 良く意味を理解できない美由の姿を見て、ウサギ主が語り始める。

 「要するに、猫達は、お前さんを警戒しているのだ。」

 「何故ですか?」

 「そりゃ、化け物を倒す、魔法少女だからだろ。」

 「その意見は最もな気もしますが、私は理由もなく、みなさんを倒したりしません。」

 「そう思っているのはお前さんだけだ。」

 良く考えてみれば確かにその通りではある。

 得体の知れない謎の存在が突然現れて、あいさつも無しに近くにいられては、確かに脅威に感じるのも仕方無い。

 「猫どもは、今回の暴走を利用して、お前さんが化け猫どもにとって、どういった存在なのか知りたいと思っておる。」

 「なるほど。」

 「ところで、どうする?行くか?」

 ウサギ主は美由に問う。

 「行きます。」

 美由は何の迷いもなく、そう答えた。

 「ありがとうございます。魔法少女様。」

 「それより、その猫はどこに?」

 美由は猫に尋ねる。

 「魔法少女様の通われている学校にいます。」

 「わかりました。」

 ウサギ主は二本の足で立っていたが、体を倒し、4本の足で立つ。

 「魔法少女よ。乗れ。そこまで行ってやる。お主の足では、1時間以上かかる、ワシなら10分でつく。」

 「ありがとうございます。ウサギ主様」

 そういって、美由はウサギ主のごつい体にまたがる。

 「そこの猫も、わしの体に乗れ。そっちの方が楽じゃろ。」

 「・・・・・・。では、お言葉に甘えて。」

 そういって、黒猫もウサギの背中に飛び乗った。

 「いくぞ。」

 ウサギ主は、二人が自分の背中に乗った事を感じ取ると、物凄いスピードで杉林をかけ始めた。



 「猫よ?お主話して無い事があるじゃろ?」

 「何でしょうか?ウサギ主様」

 「お前さんが、用意した舞台についてじゃよ。」

 美由は二人の会話の意味が良くわからなかった。それより、風圧と上下に揺れる震動のために振り落とさない事だけで精一杯だった。

 「良く、おわかりで、今回、猫達は、被害がある程度が出るまで手出しはしません。今回の暴走は皆知らなかった事になっているんで。見てはいますが、見てないふりをしているわけです。ですが、我々が考える限度を超える被害が出れば我々も身の危険があるので、その時は手を出します。」

 「魔法少女聞いておるか?」

 「はい?なんです?つかまっているだけで、精一杯で」

 「良く聞け魔法少女。猫は今回、手を出さん。」

 「はい。それはわかります。」

 「それでも猫が手を出してきた時は、お前さんは猫に見限られたという事になる。それは、お前さんが助けようとしている猫を殺すと決断したいうことじゃ。それと同時にお前さんは猫達に悪い印象を与えたという事になる。」

 何か飛んでも無い事をこの状況下ですっらと言われた気がした。

 「はい、頑張ります。」

 と、答えるしかなかった。

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