朝
「桜間さんおはよう。ふわああ。」
桐野が美由の家の玄関前で、眠そうな顔をしながらそういった。
「おはようございます。」
全く覇気の無いだらしない顔で美由は桐野に挨拶を返した。
二人は疲れた様子で歩きはじめる。しばらく沈黙が続き、桐野が口を開いた。
「ねぇえ。桜間さん?」
「はい?なんでしょう?」
「宿題やった?」
「やりました。と言うより、やったから今、こんな感じです。」
「なるほど。私もそうよ。」
「・・・・・。」
二人とも何か話そうと思うのだが、寝不足で思考が回らないので、なかなか言葉が出なかった。
「桐野さん。」
「なに?」
「昨日何時に宿題終わりました?」
「2時半過ぎかな?桜間さんは?」
「3時過ぎてました。」
二人は昨夜ハヤブサに絡まれたせいで、帰宅は22時だった。宿題が大量に出されていた事もあり、昨日は運動をしてないし、今朝は、起きられずにトレーニングに行ってなかった。
「私、普段7時間、寝てるから、流石にきついわね。」
桐野はぼやいた。
「私は7時間から6時間ぐらいですかね。他の人たちが良く4時間とか3時間睡眠で大丈夫って言ってますけど、私達はそんな短い睡眠時間で駄目っぽいですね。」
「全くね。」
また沈黙が生まれる。二人は機械的に歩み続ける。
「ふー。」
二人はあまりのけだるさから、同時にため息をついた。
「あのハヤブサなんだったのかしらね?」
「さあ。まあ、もう会う事も無いと思いますが。」
教室までやってきた二人を須王寺麗菜が出迎えた
「昨日はごめんなさい。二人とも。」
須王寺は申し訳なさそうにそういった。
「本当に酷い目にあったわよ。」
桐野が須王寺をちくりと刺した。
「本当にごめんなさいね。あの時お願いできる人が二人しかいなくて・・。」
「私達じゃなくても、生徒会で何とかしても良かったんじゃないかと・・・。」
「あまり身内の事を悪く言うのはいけないんですけど、彼らはとても一生懸命やっているんですけど、その結果、難しく書きすぎる傾向があって・・・。」
『やはり。彼女もそう思ってたのか・・・。』
桐野と美由は同時に同じ事を思った。
「処で、昨日は何で休んだの?」
「それが、良く分かりませんの。お母様が昨日はとにかく家に居て欲しいと言うものですから。」
『二日前に山で会った須王寺さんの妹さんだっけか?彼女は鬼を追ってた。そして、昨日の朝、この学校に現れた。多分、その事が関係してるんだろうな。』
そう美由は思った。美由は鬼の事件に巻き込まれた当事者なので、だいたいの裏事情をさっしていたが、口にするわけにはいかない内容なので、ここは沈黙を守る事にした。
「そうなの?お嬢様も大変ね。それより、私達、その事で生徒会の人たちと口論をしてしまったの。殴り合いとか、誰かが仕事を放棄するとかは無かったんだけど、間違いなく彼らの心証を悪くしたと思うのよ。その事で、もしかしたら迷惑をかけるかもしれないけど。」
「それは私の責任で頼んだ事ですから。仕方が無いです。」
須王寺はにこりと笑う。
「それより、今日の放課後二人とも空いてます?」
「空いてますけど。」
「ええ。」
「お礼がしたいの。今日、学校近くのファーストフードが開店なんですって。おごりますから一緒にいきません?」
「へぇえ。いいわね。」