月見と神園
「だから、その桐野って、姉さんと、どんな関係なの?」
そう言ったのは須王寺月見だった。
「あんたは、さっきから姉の事ばっかり私に聞いて・・・。おたくは鬼の事が聞きたくて、私をこんな処につれてきたんじゃないのか?」
そう答えたのは、赤服の女、神園だった。
二人は3畳くらいの広さの西洋風の装飾がされた板張りの部屋に、高級そうな机を挟んで座っていた。
月見は机に置かれた手元にある紙をつかむ。
「だって、あなたの素性を調べたけど、これを見る限り、これ以上、鬼の情報聞き出せそうに無いんだもん。そんな事より、あの学園での姉さんの友達の事を聞かせてよ。」
「だから、さっきから、何で姉の話なんだよ。車の中ではそこまで前のめりじゃ無かっただろ?」
「だって、ほら、あの時は、部下がいたから。彼らに示しをつけるためにも、ミーハーに聞けないじゃん。」
「・・・・。いや、わかった。処で、何でそんなに姉の事聞きたがるんだ?」
「ほら、ねぇえ様って、素敵じゃない。」
月見は顔を赤らめながらそういった。
「っは?」
『似たような顔立ちに、同じくらいの背丈、同じ金持ちの娘で、地位と名誉も同じくらいある人間がいったい何を・・。てか、さっきまで『姉』と言っていたのに『ねえ様』と呼び方も変わっているんだけど・・。。」
月見は今まで見せたことの無い様な、明るい笑顔で話しはじめる。
「ねぇえ様って、服の上からでもわかるぐいらい、ボッ・キュ・ボンじゃない。」
「ああ、確かに、車の中であんたの下着姿を見たが、残念な胸だったな。」
神園は月見に皮肉を言った
「そうなのよ。私たちって、顔立ちは似ているけど、私ってほら、幼児体型というより、少年の体つきじゃない。なのに、おねぇえ様は女性として理想な体をしているのよ。女も惚れる体っていうの?」
「それだけ聞くと、嫉妬している様に聞こえるが・・・。」
「嫉妬は、そりゃあしますけど。あの抱かれ心地の良い体に包まれれば、そんな気持ちも吹っ飛んでしまいわすわ。」
「わ。わからん・・。」
「最近、私、悩んでますの。最近、ねぇえ様が私を全然抱きしめてくれなくて・・・・。」
『何を言い出すんだ、このお嬢様は・・。』
「ほら、みんながいる手前、なかなか出来ないのも分かるんですけど。私としては人前でも気にせずにキューっと抱きしめて欲しいのよ。」
「あんたの願望なんて知るか。」
「あなたもねぇえ様に抱かれて見れば分かるわよ。ねぇえ様のあの胸の香りはとても素敵なんですよ。」
「そんな性癖を告白されても困るんだが・・。」
「性癖とは失礼ね!姉を思う純粋な、妹の思いがわからないなんて。」
「いやいや、子供の時なら分からないでもないが、高校生にもなって姉の臭いをかぎたいとは思わないだろ。」
「そんな、普通ですって。」
神園はおでこに手をあてる。
「あ、そう・・・。処で、何でこんな話を私にする?」
「え?だって、他にねえ様の事でこういった話が出来る人いなんですもん。私はずっと誰かとねえ様の話でガールズトークを繰り広げるのを夢見てたんですよ。」
「だからって、私にするな。このシスコン。」
「シスコン結構!!それより話を続けるわよ。」
「ふう。」
「あ、そうだ。忘れてた。ねぇえ様の話でガールズトークをする前に、言っておかないと。」
「なんだ?それと、あんたの姉の話をするのは既に確定なのか?」
「突然で悪いんだけど、あなた、バイトしない?」
「バイト?」
美由は家に帰り着いて自分の部屋で勉強をしていた。
「ああ。もう、何で、こんな日に限ってこんなに大量に宿題が出てるかなぁあ。」
思えば美由も今日はさんざんな一日であった。その締めくくりがどんだけやっても終わらない宿題の山だった。
『今日は3時には寝られるかな?』