ハヤブサと猫
ハヤブサはしゃべりだした。
「今日はずっと雨だったじゃないですか。だから狩りに出られず、あっしはお腹をすかせてたんでさ。そしたら夜になったら、雨が止んだじゃないですか。」
「はぁあ・・・。」
「空腹と戦ってたあっしは、夜間にもかかわらず狩りに出る事にしたんでさ。空から獲物を探すんですが全く見つけられられず、時間だけ過ぎていったんでさ。」
「まあ、こんだけ暗ければねぇえ。」
「餌は採れずに無駄な体力を使い続けたあっしは、あまりにの空腹に一瞬、気を失いまして、そのまま墜落したんでさ。」
「その時、ケガをしたと。」
「はい、その通りで。」
「それで、飛べなくなって、ここでうずくまっていたと。」
「いいえ。うずくまっていたのは別の理由があるからで、墜落してケガをしたのは確かなんですが、飛ぶのに支障は無いんすよ。」
「はて?どういうこと?」
「それは、聞くも涙、語るも涙でして。私が墜落して目覚めた時に、猫の化け物に囲まれてまして。」
『ん?猫?』
「猫?良く食べられなかったわね。」
『猫・・・。猫の化け物・・・。確か、ここらへんは、あの太っちょメスの三毛猫の縄張りなはず。』
「ええ。運が良いとしか。猫の化け物達が今にも、あっしに襲いかかろうと。」
『確か、学校周辺の担当は、桐野さんが餌をあげている猫だった様な・・・。』
「酷い事するわねぇえ、その猫たち。」
『桐野さん。確証はありませんけど、多分、あなたの猫だと思います。』
「そんな折りに姉さん方が通りがかったわけで、猫たちは一目散に逃げたわけですが、あっしはあまりの恐ろしさに、体が動かなくなり、見つからない様にゴミのふりを・・・。」
『ゴミのふりって。さっき私がゴミと言ったら怒ったじゃないですか・・。不条理な・・。』
「災難だったのね。」
「えぇえ。それよりも姉さん方は命の恩人です。恩を返すために何か食べ物をとってきます。」
「あの。あなたの食べ物って・・・。」
「姉さん方は結構がたいが大きいので、大物じゃないと駄目ですよね。この時期のこの時間帯なら照明の近くにいれば、ハエや蛾がいっぱいです。流石にカブトムシやクワガタカナブンは今の時期は無理ですが。」
「い・いらない・・・。」
「姉さん方は贅沢ですねぇえ。スズメの方がよろしいので。」
「それもいらない。」
「しかたがありません。ここは命を賭けてカラスを・・・。」
「もっといらない。」
「では、姉さん方はあっしに何を採って来いと?」
「何も採ってこなくて結構です。」
美由は猛禽類の申し出を拒絶した。
「そうよ。話を聞く限り、たまたま私達が通りかかっただけで、何もしてないのと同じだし。恩義を感じられても正直困るわよ。」
桐野は遠回しに遠慮の意思をしめした。
「それより、カラスって強いんですか?ハヤブサって確か狩りの名手ですよね?」
「そっちの大きな方の姉さん何を言っているんですか?カラスの強さは異常何すよ?まともに戦ったら勝ち目なんてありません。なのに、なのに、あいつ等と来たら、一羽だけでも強いのに、チームを作って連携攻撃をしてくるんですよ。彼等を狩るのは命がけなんすよ。」
「命に関わるのなら、カラスを狙わなきゃいいんでは?」
「それは、猛禽類としての意地とプライドが許さないといいましょうか・・・。それ以前に彼等が勝手に絡んでくるんで、相手をせざるを得ないというか・・・。
「どう言う事?」
「カラスは悪戯好きな上に好戦的でして、ストレス解消のためにあっし等を襲ってくるんですよ。たまに不意打ちで襲って痛い目にあわして、手を出せば痛い目を見る相手と学習させとかないと、こっちの被害が尋常じゃないというのが。」
美由は先月のいじめ事件を思い出す。
「人間も鳥もあまり違いはないんですね。」