能ある鷹は爪を隠す。
時は21時を過ぎていた。
桐野と美由は街灯の無い国道を歩いていた。
「ふぅう。桜間さん、私、思った事があるの。」
「何でしょ? 」
「能ある鷹は爪を隠すっていうじゃない?」
「はい」
「あれって真理ね。無能と思われてた方が余計な仕事を押しつけられずにすむし、下手に能力を発揮すると自分が痛い目をみる。」
「私は何ともいえませんけど。」
「見下されていた方が楽って話よ。あえてピエロを演じ、無能のふりをする。実際、彼等がやっていた手よ。わざと沈黙を示して抵抗する。」
「うーん。何とも言えませんね。」
「彼等は責任をとる気が無いのよ。責任をとる気が無いから、無能を演じる。無能の演じ方は簡単ひたすら沈黙する。」
「それは、うがった見方では?」
「桜間さんは甘いのよ。責任を明確化した時点で、あのやる気の発揮ぶりでしょ。明らかに私達を見下してたのよ。」
「何とも言えないなぁあ。ただ、純粋に気づいて無かっただけかもしれないし。」
桐野は美由の前に出て立ち止まり、一本指を立てる。
「いい?それって、まともに小論文が書けないって事よ?推薦だったら小論文は必須でしょ?小論文で一番大事な事は『日本語としておかしくない文章を書く』事なのよ。この作品を書いている作者に聞かせてあげたいわ。この作品、誤字脱字はあたりまえ、日本語としておかしい文章が一行毎に何カ所もある。これは、読み返しもせずに投稿するからよ。この作者には投稿をする前に読み返しをする覚悟がなさすぎるのよ。更に、たまたま読み返して、おかしな点に気づいて、それを直しても、書き直した後読み返しを行わないから、修正部分から後の文がつながっていないのよ。それって、書き直した後読み返せば気づく事じゃん。だから、無意味に各話5回6回と書き直しをせざるを得なくなるのよ。私の台詞だっておかしい処があるでしょ?天才キャラの私にそんな仕打ちをするのよ。もう、この作者許せない・・・・・。話がそれたわね。そういうわけで、あの人達は読み返しを行っていないのよ。だからミスに気づかない。それなのに自分は有能だと思っている。自分は有能だから間違えるはずがない。だから読み返しを行わない。あの調子だと推薦とれても確実にあの人達、落ちるわね。」
「酷い事言うなぁあ。私もそう思っているので否定はできませんが。」
桐野は美由のとなりに移動し、歩き始める。
「後、もう一つ思ったの?」
「何をです?」
「『生徒会やクラスの役員になりたいと思わずに良かった。』って。」
「それは同意です。あの仕事は正直、もう、したくないなと。」
二人が歩いていると、歩道の行く先に街灯に照らされて何かがゴミの様なモノが落ちていた。
二人は『何だろう?』と思いながらお互い何も言わずに歩みを進める。
そのゴミの手前まで来て分かった。トンビか鷹かしらないが、猛禽類らしき鳥が翼で頭を隠しながらうずくまっていた。