アイロンと生徒会
ジュー
昼休みになってた。
朋は家庭科室を借りて、友達3人と共に濡れた制服をアイロンがけしようとしてた。
「干していたのに、全然乾いてないね。」
朋の濡れた制服を触りながら、あずさがそう言った。
午前中の朋達の教室の窓際には朋の制服がずっと干されていたのだった。
「雨だからしかたないよ。」
「それにしても、ちびっこの制服が午前中ずっと教室に干されたいたのは、なかなか趣があってよかったな。」
「絵里ちゃんそれじゃあ、変態さんだよ。」
「あうー今日はずっと、恥ずかしい思いばかりしてるのです。」
そう言ったのはブルマ姿の朋だった。絵里はすかさず朋の頭をなでる。
「気にしない。気にしない。みんな可愛らしい女の子ブルマ姿を見られて、ほほえましい気分でいられたぞ。」
「うー。ブルマ姿は見てる分にはカワイイと思うけど、実際着る側になると嫌なのです。アイロンの熱でスカート乾かして、おさらばするのです。」
「残念ね。せっかくカワイイのに朋ちゃんのブルマー姿。」
「あずさちゃんまでー。」
「はい?」
そう言ったのは美由だった。
教室でお昼を食べていた美由に桐野が変な依頼をしてきたのだ。
「ほら、今日、須王寺さん休みじゃん。」
「ええ。」
「さっき彼女から電話があって、生徒会の仕事でどうしても今日終わらせないといけない仕事があって、それを手伝って欲しいって。」
「何で、それを私たちに?」
「友達だからじゃないの?」
「むー。それでも、生徒会にも人はいるわけで、別に私達じゃなくとも。」
「単純に人手が足らないんじゃないの?そんなことより、もう引き受けたんだから、桜間さんも来る。」
そう言いながら、桐野は美由を引っ張ろうとする。
「ちょっちょ、お弁当がこぼれる。わかりましたから、ちょっとお弁当をしまわせてください。」
お弁当をしまい、桐野と共に生徒会室へと向かい歩きだした。
『そういやあ、朋ちゃんの処にいかないとなぁあ。鬼について説明しないといけないし、ジャージも返して貰わないと・・。」
「・・・ねぇえ聞いてる?」
「ごめん、考え事してた、何?」
「生徒会で何やるのかしらね?」
「さあ。須王寺さんに聞いて無いんですか?」
「全然。」
「良く中身を知らずに引き受けましたね。」
「まあ、須王寺さんの事だから、無茶な依頼はしないでしょ。」
「そういえば、桐野さんって生徒会長キャラっぽいけど、生徒会長になった事はないの?」
「無いねぇえ。だって、私、人望無いし。そういった野心も無いから。」
「生徒会に入るのに野心がいるんですか?」
「そりゃ、いるでしょ。一応選挙で選ばれるわけだし、よっぽどの生徒会というステータスが欲しいという野心を抱かない限り、選挙で勝ち残る事なんて出来ないって。」
「それもそうですね。」
生徒会室に入る。
「すいませーん。須王寺さんの代理で来たんですけど。」
そう桐野が生徒会室にいる生徒に言った。
生徒会の人間に仕事の説明を受ける。どうも、全校生徒に配る6月の生徒会のしおりの作成を手伝うというものだった。あがってきた原稿のチェックが二人の仕事らしい。
桐野に原稿が渡される。彼女はその原稿をジーと見つめた後、口に指をやった。
「うーん。」
「どうかしました?」
桐野が難しい顔をしていたので、美由は聞く。すると、彼女の手に握られていた原稿を渡される。
美由も読んでみる事にする。
読んですぐに、この原稿はかなり手強い相手だと気づく。何せただ読んでいるだけだと、半分くらい何が書いてあるか理解できないのだ。
書いている本人は分かっているので、この内容でも伝わるかもしれないが、前提知識が全く無い美由や桐野は何が書いてあるかわからないのだ。
それに、難しい言葉や表現をやたら多様しており、正直、何かの暗号にしか思えない。
「うーん。」
美由は桐野と目を合わす。
「どうしましょうか?」
「どうしようか?」
沈黙がしばらく続き、桐野が口を開いた
「桜間さんひとまず私の提案を聞いて貰えるかな?」
「はい」
「このままOKを出す。」
「それは良いです・・。」
そんなとき、桐野の携帯が鳴り出す。どうもメールが来たらしい。そのメールをチェックして、すぐに美由に見せた。
「須王寺さんから」
そこには『桐野さん、桜間さん。生徒会として恥ずかしくないしおりにしてくださいね。』と、書いてあった。
メールを読んだ二人は顔を合わす。
「どうしましょ?」
「どうすると言われても。これ直すの大変よ。」
「それは分かってます。多分、放課後、遅くまで残ってやっても終わりませんよね。これ。」
「そうだよねぇえ。正直はじめからやり直した方が早いくらいだしねぇえ。」
自前で書く同人小説なら気にする必要はないが、これは全校生徒に配るチラシである。このチラシを読んで8割の人間に理解させるような文体で書かなくては意味が無い。
桐野や美由ですら読解に苦しむ様な文体で書くなど論外なのだ。
こういった難解な文章を、わかりやすくかみ砕いて書き直すのは恐ろしい程の時間と集中力を使うのだ。
それが分かっていたので、桐野はこのままOKを出そうと言い、美由も同意しようとしてたわけだが、そこに計ったかの様に須王寺のメールである。
二人は須王寺にハメられた気分になっていた。