ブルドッグと鬼と
山の中で雨に濡れた一匹のブルドッグがいた。
「ふう。また、迷子になってしまったわね。」
朋に「迷子になったので家まで連れて行け」と言ったあの犬の化け物だった。
「夜のお散歩とか言って、気軽に家を出てみれば、雨が突然降って来て、雨宿り先を探していたらいつの間にかに迷子に。ふう。何で、私だけがこんな不条理な目にあうのかしら。」
自分の無謀さと方向音痴と判断ミスを棚にあげ、運のせいにして愚痴をこぼしていた。
ブルドッグは周りを見渡す。
杉林の向こう側には2m程に伸びた草むらが広がっていた。
草むらには何か大きな物が最近通った跡があり、草の壁が強引に押しのけられ、道が出来ていた。
「なにかしらね。帰り道かしら?」
犬は首を素早くふり、体の水気を飛ばした後、草むらに出来た道を進みはじめた。
草むらの中を進むと、人間の臭いがしてくる。だが、人間の臭いとは少し違っていた。
道を進むと、そこにはオレンジ色の鬼がうずくまりならが寝ていた。
ブルドッグは、よせばいいのに鬼のおしりをつつく。
起きなかった。
更に、強く鬼のお尻を叩きはじめる。
「ちょっと、あんた、置きなさいよ。」
それでも起きない。
「まったくもう。」
犬は鬼の体によじ登り、頭に乗って鬼の頭をバンバン叩きはじめた。
さすがに、鬼も目覚め、顔をあげたと思った、突然首を素早く振りはじめ、頭についた変なものを払い飛ばそうとする。
犬は草むらにたたきつけられた。
「痛いわねぇえ。」
鬼は立ち上がり、草むらに転がっている犬を見ると、よだれを垂らし、前かがみになる。
「な、何?あんた?私をもしかして、食べようとしている?」
鬼は犬に飛び掛り、喰らいちこうとするが、小さく体が幸いしその攻撃ははずれる。
ブルドッグは道のできてない草の壁の中へと潜りこむが、鬼はくさの壁などものともせずにいぬを追った。