早朝2
須王寺麗菜は、家から学校へ向かうため、黒塗りの外国車の後部座席に乗り込もうとしていた。そんな時、家で執事をやっている男性が、走ってやってきた。
「麗菜さま。」
麗菜は車に半分、体が入りかけていたが、体を外へ出して立ち上がり、走ってくる男性を待つ。
「どうされました?」
「お母様が、本日は学校は休んで欲しいと。」
「お母様が?何かしら。」
「さあ。詳しくは聞いておりませんが、本日は家にいて欲しいと。」
「お母様の頼みならしかたありませんね・・・。そう言えば月美はどうしました?昨日から見てない様な。」
「月美様は、昨日から巫女の修行に入られておりまして・・・。」
「そう。うちのしきたりで、真の当主になるためには巫女の修行を積む必要がありますからね。それと、私が今日、家にいなきゃいけない事と関係があるの?」
「さあ。私にはわかりかねますが。多分、関係無いかと。」
「そう。後でお母様に理由を聞きましょう。それにしても、家の名前に寺が入っているのに敷地内に神社があるって妙な感じね。」
「そうでございますね。須王寺家は代々続く由緒ある家。初代がこの家を興した頃は何か寺に関係していたのかもしれませんな。」
「ところで、巫女の修行って何をしているのかしら。お母様も月美も教えてくれなくて。お父様は養子ですから神社や巫女の事はわからないのは仕方が無いとはいえ。」
「私はあちらの方は全くタッチしておりませんので、私に分かるはずが・・・。」
麗菜には退魔師業の事は秘密にしているようであった。
美由は自分の部屋で起きた。隣には赤服の女と、犬が寝ていた。
昨日の夜、足をくじいて気分が悪そうだったので、特別に許可をしたのだった。
外は雨が降っている。今日はいつもの早朝トレーニングができない。
雨の時は美由の狭い部屋でも出来るストレッチをするのだが、今日は犬と女が占領して出来そうにない。
『まいったなぁあ。』
美由が困った顔をしていると、犬と女が一緒に起き上がる。
「あら、おはようさん。」
「おはようございます。」
「あら、外は雨が降ってる。よかった。野宿じゃなくて。あんがとね。」
「いえいえ、どういたしまして。」
「ん?今日はトレーニングしないの?」
「外は雨ですよ。」
「それも、そうねぇえ。」
「ところで、昨日の鬼ってどうなったか分かりますか?」
「あれからあんたとずっと一緒よ。分かるわけない無いじゃん。」
「ですよね。」
「気になるんなら、あんたが学校に行っている間に調べておくわよ。」
登校時間になり、桐野が美由の家に傘を差してやってくる。
「桐野さんおはようございます。」
「おう、桜間さんおはよう。今日は、須王寺さんは家の用で休みだってさ。」
「何故、あって早々、須王寺さんの話題・・・。」
「さっき電話があったから、あんたにも伝えようと思って。須王寺さん凄く残念がってたよ。今日も桜間さんをお嬢様としてビシビシ鍛えるつもりでいたのにと。」
「私みたいな男おんなに、お嬢様要素なんていらないんですけど・・・。」
「あら、私は見てて凄く面白いわよ。」
赤服の女は二人の会話を聞いて苦笑していた。