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魔法少女ガラミン  作者: からっかす
2話 猫たち
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ウサギが筋トレをする。

 美由は、いつもの白いランニングウェアーに水色のリュックサックを背負って、夜の山の斜面を登っていた。

 周りは植林により植えられた高い杉林に囲まれており、地面は腐葉土で覆われている。

 腐葉土は柔らかいため足が埋まり、滑りやすい。そんな足場の悪い斜面を彼女は必死に登っていた。

 そんな彼女の目の前に、大きな何かが現れる。

 それは、体長が3m程ある、野ウサギだった。大きいのは身長だけでは無く体格も太い野ウサギだった。

 野うさぎの体格が太いのは脂肪がついてそうなったのでは無く、茶色い毛の上から見てもわかる、筋肉のせいで太いのだった。

 その野ウサギは、もの凄いスピードで腹筋をしていたが、美由が近づいて来たのに気づき、腹筋をやめて起きあがり、前足で自分の顔の汗をぬぐった。

 「おお、魔法少女ではないか、聞いたぞ、もう一人、魔法少女が現れたんだってな。」

 「はい、ウサギ主様。もう、噂がここまで流れてきているんですか。」

 「おう、お前さんが、部屋でコスプレして楽しんでいる話と一緒にな。」

 美由の顔が紅くなる。

 「何で、みんなそっちも興味があるんだ。新しい魔法少女の話だけで・・・・。」

 ブツブツと美由はつぶやく。

 「まあ、趣味は人それぞれだ。わしの趣味は筋トレだし、三上の蛙主は人間の若い女に興味がある。まあ、趣向はそれぞれあるもんだ。」

 「私は別に趣味でやったわけじゃありません。」

 美由は思わず、大声で反論した。

 「それに、化け物化しているのに、何で、筋トレなんかしてるんですか?化け物化すれば、肉体維持が難しいのに。」

 「そりゃ、趣味だからに決まっておろう。」

 「言っておきますが、肉体を太くすれば、太くする程、肉体維持は難しくなるんですよ?」

 「そんなことは、化け物でない、お前さんに言われとうはない。わしは、三上の蛙主に相撲で負けるのが嫌なのじゃ。」

 「何です、その鳥獣戯画的争い。」

 「わしは、魔法力が弱い。だが、あのカエルは魔法力強い。わしがあやつに勝つためには肉体を鍛えるしかないのだ。」

 ウサギは、自分の筋肉美を美由に見せつけるために、ポージングを行い、力を込める。すると、ただでさえ、太い筋肉が更に膨らむ。

 「相変わらず、凄い筋肉ですね。」

 ウサギ主はポージングを変える。

 「そうじゃろ。」

 美由は肩に背負っていたリュックを地面に下ろし、チャックを開け、中からモノを取り出した。

 「ウサギ主様、これ、お土産です。」

 そういって、差し出したのは4Kの粉末プロテインだった。

 「おお、いつもすまんな。蟻や昆虫や山魚も良いが、筋肉にはこいつが一番でな。不自然な強い甘い臭いがあるのはいただけんが。」

 「山魚って、ウサギ主様はウサギですよね?」

 「そうだが?それが何か?」

 「ウサギって、ふつうドングリとか野菜とか食べません?」

 「それだけは、この美しい筋肉美を維持できんぞ。」

 「もう、いいです。」

 「それより、ウサギ主様。イメージ戦闘がしたいのですが?」

 イメージ戦闘とは、魔法少女や有る一定のレベルに達した化け物が、お互いの思考を繋ぎ、想像の中で現実に近い空間を作り、そこで戦闘を行うというものである。

 「ん?お前は、イメージ戦闘の時はワシの所に来るが、お前は蛙主と仲がよかろう。ヤツとやらんのか?」

 「蛙主は、戦闘を真面目にしないだけではなく、私にセクハラしてくるので。」

 「仕方ないやつじゃのう。」

 「すいません。」

 美由は正座して背筋を伸ばし、目を閉じ、想像の空間へともぐる。




 想像の空間の中は真っ暗だが、地面が光を放っており見る事が出来る。地面はどこまでもまっ平らに続いている。

 美由は魔法少女テラミルとなっていた。テラミルもウサギ主も微かな光を放ち見る事が出来る。

 テラミルは構える。

 「いきますよ。ウサギ主様。」

 「いつでもこい。」

 テラミルは超加速で地面を蹴りつけ、ウサギ主の懐に飛び込んだ。彼女が跳びながら、パンチを繰り出そうとした瞬間、大きな前足で横からはたき落とされる。魔法少女のシールドが球体に発動するが、その球体がグニャリと歪む。テラミルは地面に叩きつけられ、一回バウンドした後、地面を滑っていく。

 「こら、魔法少女。いつも言っておるだろ。相手が既に戦闘態勢に入っていたら、むやみやたらに、しかも、まっすぐに突っ込むなと。」

 「はい。」

 そういって、テラミルは上半身を起こし、右手の甲で、顔を拭う。

 「返事はいつも良いが、ちーっとも、次にいかされとらん。わしが飛び道具を持っていたら、その瞬間蜂の巣にされとるぞ。」

 テラミルは起き上がり、また、超加速で突っ込んでくる。

 「全く反省しとらんみたいだの。」

 ウサギ主は、前足で張り手を繰り出す。テラミルは、それをカウンターでモロに喰らってしまう。球体のシールドが歪み、後方へとはじき飛ばされる。

 「魔法少女よ。何回言えばわかる。超加速は確かに凄い技だが、ただ、まっすぐ突っ込んだら、簡単にカウンターを喰い、相手の攻撃と自分が移動している時の力が自分に全て帰ってきてダメージを受けると。お前さんがやっているのは、自分に向けられている槍に自分から飛び込んで刺さりに言っているようなもんじゃ。」

 「はい。でも、私、これぐらいしか技がなくて。」

 「技が無くても、魔法少女で強化されたパンチがあるじゃろ。足も強化されてるから、それなりの足さばきもできるじゃろ」

 「やってみます。」

 テラミルは立ち上がり、すばやい足さばきで、ウサギ主を中心に反時計回りに回りながら、距離を詰めていくが、ウサギは突然動きだし、前足を横に開いてラリアットをする。テラミルは両手で亀ガードをして攻撃を受けるが、やはり飛ばされる。

 「ただ、突っ込むだけよりはマシじゃが、単調に同じ動きを続けていれば、喰らって当たり前じゃろ、もう少し体を左右に振って、リズムを読ませない複雑な動きで、懐にはいらんか。」

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