須王寺
須王寺に似た女は美由を見て不思議な顔をした。
「誰?あなた?」
「え?須王寺さんではないんですか?」
「いいえ。私は須王寺ですが。」
「桜間です。」
「桜間?知らないわね。」
「?須王寺 麗菜さんではないんですか?」
「ああ、麗菜姉さんのお友達なの。姉さんに退魔師のお友達がいるとは知らなかったわ。」
「あの、私は退魔師では無くただの女子高生で、そちらの倒れている方が退魔師さんです。」
「そうなの。大丈夫ですか?そこの赤服の退魔師さん。」
「どうも、須王寺さん。まさか、須王寺家の人間が直接でばって来るとはね。」
「あら、あなた。私達を知っているの?」
「そりゃ、ご同業であんた等を知らないのはモグリだろに。」
「それもそうね。ご同業なら、分かっていると思うけど、今回の件は内密にしてね。」
須王寺妹は、にこやかな笑顔でそう言う。
「わざわざ、念を押さなくてもいいわよ。そんな自分の立場も危うくする様なバカなマネはしないわよ。」
須王寺妹は美由の方を見る
「そこの姉さんのお友達の方もお願いします。」
「はい。」
「ところで、その女子高生が何で退魔師と一緒に鬼退治をしているのかしら?懸賞金目当てで鬼と戦っていたの?」
「違います。私の格好を見てもらえば分かると思いますが、体力づくりのためにランニングを彼女と一緒にしてたら、突然、鬼が現れて、襲ってきたので。」
「それは運が無かったわね。私達が追いたてていたから、敵と思ったのかしらね。で、何で女子高生と退魔師が一緒にいるか教えて貰えるかしら?」
「ええと、私には化け物を見る目があって、たまたま、彼女が消えている時に私が彼女がいる事に気づいて、何故だか、その事が彼女の興味を引いたらしく、彼女が私をつけて来まして、えっと、それで、私は日課で毎日、この時間に走っていて、彼女も何故か私を追って着いて来て、そしたら鬼にあって。」
「説明が分かりづらいわね。」
「すいません。」
「要するに、あなたが天然の見える目を持っているのが気になって、そこの退魔師さんがあなたを調べるためストーキングしてたというわけね。」
「まあ、そうです。」
「納得はいかないけど、今はそういう事にしとくわ。あの鬼を取り押さえ無いといけませんしね。」
彼女はアスファルトに刺さった、槍を引き抜き、森へ歩みだすが、2・3歩歩いた後、振り返る。
「そうだ。もう一つ、念を押して置く事がありました。姉には絶対に言わないで下さいね。特に私に会った事。それと、姉さんに妹がいる事も内緒にしてね。」
「はあ。何故でしょう?」
「人は色々と複雑な家庭の事情を抱えておりましてよ。そういう無粋な事は言わないで下さいまし。」
「素直に聞いてた方が良いわよ。あんたの身のためにもね。」
赤服の女は吐き捨てるように言う。
「わかりました。」
「では、これで失礼しますわ。」
そう言って彼女は森の中へ消えていく。
二人は呆然とそれを見ていた。
美由は赤服の女に近づく。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ではないわね。走るのは無理そう。でも、立って帰るぶんには問題無いわ。」
「肩を貸しましょうか?」
「遠慮しとくわ。でも、立ち上がるのは手伝って。」
「わかりました。」
美由は右手を彼女に差し出し、彼女はその手を掴む。美由は腕に力を入れ、彼女を引っ張り上げる。
「助かったわ。」
「いいえ。」
「まさか、鬼がここまで来てるとはね。」