近寄る鬼
蛙主とウサギ主にタヌキ主、猿にイノシシ、それと傷だらけの黒猫が、山奥の杉林に集まっていた。
「何じゃと、鬼じゃと?」
蛙主が驚いた声をあげる。
「はい。どうも、鬼が発生したようです。」
傷だらけの黒猫が、落ち着いた感じで話始める。
「迷惑な話だな。お主等の縄張りでか?」
ウサギ主が黒猫にたずねる。
「いいえ。この街ではなく、こっから30Km程はなれた大きな街での事だそうです。」
「近いのか遠いのか微妙な距離だのう。人の足なら歩いて半日、走れば2時間から4時間。ワシなら三日はかかる距離だのう。」
蛙主は手であごを撫でながらそういう。
「カエルは修行が足りん。ワシなら1時間で行ってみせるぞ。」
巨大で筋トレが趣味のウサギ主がカエルに対して妙な対抗意識を見せた。
「ウサギよ。お前さんと比較するな。体のつくりが違うんじゃい。」
「あの、ウサギ主様、蛙主様脱線をしている場合では無いのですが・・・。」
黒猫が二柱に釘を刺す。
「でも、鬼じゃろ?ワシ等、化け物の管轄ではない。鬼は人間が何とかするべきものじゃ。第一、そんなに離れているのであれば本当に関係ないではないか。」
ウサギ主は黒猫の意見に反論する。
「それがですね。どうも、人間が取り押さえようとして、失敗し、どうも、こちらの街へ向かって逃げているそうなんです。それで、その鬼を追って、人間の退魔師の団体も一緒にこっちに来ているみたいで・・・。」
「何と、迷惑な。」
猿がそういう。
「で、とにかく、鬼にも退魔師の団体にも巻き込まれない様に身を隠してください。」
「鬼は暴走と違って、ご飯さえ食ってれば、ずっと生き続けるからのう。何日身を隠しておけば良いのやら。」
神園という赤い修道服の様な服を着た退魔師はインターネット喫茶にいた。
マウスのホイールをクリクリ回しながら、文字化けした文章を読んでいた。
暗号化されているのである。
彼女は独り言をつぶやいた。
「へぇえ。こっちに向かっているのか。」
彼女は、賞金がかけられた化け物とやらを調べていた。男には否定したが、もし、運が良ければというのもあり、一応チェックする事にしたのだ。
「特徴は、と・・・。」
彼女は特徴を読み、ふと疑問に思った。
『こいつは化け物じゃないんじゃないのか?鬼の様な気がする。』
色々な仲間内のページを移動し、情報収集をする。
そして彼女は床を蹴り、椅子を後ろに移動させ、伸びをする。
「ああ、やっぱり、鬼じゃん。何で化け物と偽って鬼をフリーの連中に狩りさせようとしてるわけ?鬼殺しは立派な殺人よ。」