ジェミニと赤服の女
美由と桐野が教室に入ると、須王寺が二人に声をかけてくる。
この3人を近藤ジェミニは見つめていた。
『最近、あの三人いつも一緒ね。』
桐野と須王寺が熱く語り、美由がオタオタしている。
『まったく、あの女。よりにもよって、須王寺さんと、口うるさい桐野に取り入るなんて。あの二人に挟まれれば、彼女に嫌な思いを抱く人たちも黙り込むしかないじゃない。なんて、計算高い女なの。』
実際の処、ジェミニは勘違いをしていた。
須王寺と桐野が、美由をオモチャにして遊んでいるだけなのだが、事情を知らない他の人から見れば仲の良い三人組みに見える。
美由に不満を抱いているジェミニから見れば、美由の困った顔も計算している様にしかみえなかった。
『あの、変な女も、あれ以来、連絡ないし。何してるのかしら。』
補習が終わり、ジェミニが学校から帰ろうとすると、突然、赤服の女が現れる。
「今、あんた暇?」
ジェミニは髪を掻き揚げる。
「何か良い情報でもあったのかしら?」
「いいや。一応、経過報告と思っただけだが。」
「まあそれでも良いわ。」
ジェミニと赤服の女は、裏庭へと移動する。
「で、あの女について分かった事を教えてくれない?」
「そうだなぁあ。一言で言うと、非常につまらない女だな。」
「と、言うと?」
「家に帰ったら、まず、勉強をして、暗くなったら街を走って体力づくり、その後、また勉強して、寝て、起きたら、また走りに行って、その後学校の繰り返しだ。」
「本当につまらない女ね。他には何かしてないの?」
「本当にそれぐらいしか、知らないな。まあ、受験生としては妥当な生き方とも思うが、もう少し華のある生き方をしてもらわないと、正直、見張っているこっちがつらいわよね。」
それはそうと、最近、あの女、須王寺さんと桐野さんと仲が良いみたいなの?何か知ってる?」
「さぁあ。まあ、その二人なら、あの女の家に遊びにきてたぞ。」
「遊びに来ていた?で、どうだったの?」
「どうだったと聞かれてもなぁあ。あの女を須王寺と桐野という二人がオモチャしてて、あの女は二人のいじりにあたふたしているだけに見えたが。」
「オモチャ?」」
「ああ、オモチャにされてたな。話を聞いている限りでは、本人はその気がまったく無いのに、桐野と須王寺の二人が、あの女をおねぇえさまとして、プロデュースしたいとか何とか。」
「それって本当なの?」
「そうは言っていたが、それが本気なのかどうかは別の問題だからな。ただの冗談だと思うけどな。」
「ありがとう、ずいぶん参考になったわ。」
「ん?私は何も話してなんだがなぁあ。あの女の不思議な力について知りたいわけじゃないのか?」
「ああ、何かそんな事いってたわね。見えないモノがみえるとか。正直、そんなのに興味は無いわ。」
「まあ、そっちには何も成果はないから、それでいいなら、こっちも問題はない。」
ジェミニは財布を取り出し、一万円札を5枚引き抜く
「はいこれ。依頼料。」
「ありがたく受け取っとくわ。それより、私、あの女を追うのを止めようと思っているの。」
「そう。まあ、勉強やジョギングにつきあったて、つまんないでしょうしね。」
「わかっているじゃん。それじゃあね。」、