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魔法少女ガラミン  作者: からっかす
7話 鬼
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悪霊

 美由は急いでシャワーを浴びて、制服に着替え玄関を出る。

 「桐野さん。」

 髪がボサボサで、ちゃんと制服を着てない美由を見て、桐野は「っき」っと怒る。

 「桜間さん。髪がボサボサになっているし、制服も歪んでる。あなたに憧れている子がガッカリするでしょ。もう一回家入って身だしなみを整えてきなさい。」

 「ええ、でも、桐野さんを待たせちゃ悪いし。別に私はこれでも。」

 「私が良くないの。」

 「はい。やり直してきます。」

 美由は反省して家にもどり、鏡の前で髪をとき、制服をととのえてからまた玄関を出た。

 「よし。」

 桐野は満足そうな顔をする。

 「さて、学校行くわよ。あなたにあわせて、歩きで行くつもりで早く来たけど、走らないと無理ね。バスで行きましょ。」

 「そうしましょうか?」


 退魔師の女と大きな犬も二人の後を追う。

 『また、今日もついてくるのか・・・・。こんな事してて本当に食べていけるのだろうか?』

 美由はこの一人と一匹がついてくる姿を見て、そう思った。


 「ところで、桜間さんはいつも、こんな走らないと間に合いそうにない様な時間に家を出るの?」

 桐野が話しかけてくる。

 「ええ。私、足だと、このくらいで十分なので。」

 「確かに桜間さんが遅刻したのって、私の記憶では先週の日曜の補習一回だけね。それにしても、良く間に合うわね。」

 「毎日走ってますから、それくらいなら何とも。」

 「桜間さんの王子様的なところって、密かに体を鍛えてて、努力している処にあるのかもねぇえ。」

 「それって、私が男っぽいって事ですか?」

 「平たく言えばそうなるかな。でも、カッコいいじゃん。須王寺(すのうじ)さんはあなたに可愛さを取り入れたい様だけど、私は断然、カッコいい男路線で行きたいわね。」

 『この人は何を言っているんだろう?』

 「あの、何を言っているのでしょ?」

 「あなたのプロデュースの話よ。おねぇえ様としてどうやって売っていくのか。」

 「そんな・・。迷惑な。それにアイドルじゃあるまし・・・。」

 「おねぇえ様は学園のアイドルよ。アイドルだからこそ、プロデュースが必要になる。須王寺(すのうじ)さんと私は言うなれば、あなたのプロデューサーって事になるわね。」

 「いつの間にそんな事に」

 「あなたが、お嬢様方に暴力を受けた日からよ。どちらにせよ、お嬢様方を『おねぇえ様』として屈服させない限り、あなたに平和な学園生活は無いんだから、選択肢は無いわよ。」

 『酷い・・・。』

 赤服の女は苦笑していた。


 3人と一頭はバスに乗り込み学校へと向う。

 美由と赤服の女、黒犬はある一人の中年男性に違和感を感じる。

 『あの男性、何か黒いモヤみたいなものが・・・。まあ、たまに見るし、関わらないでおくか。』

 「あら、あなたも気づいているみたいね。」

 赤服の女が美由に話かける。美由は桐野がいる手前、返事をかえさない。

 「あの男、悪霊に取りつかれているわね。」

 『悪霊って・・。』

 「丁度いいわ。私、お仕事に行ってくるから。」

 そう言って、彼女は姿を現し、男の元へと歩いていく。

 『突然現れると、気づかれるでしょうに。』

 「あれ?あの赤服の女の人って乗ってたっけ?」

 桐野は突然現れた彼女を見て、そういう。

 「のってたんじゃないですかね?突然現れるわけもなし。」

 「あんだけ、目立つ格好だと、気づくと思うんだけどな。」

 『ずっと、あなたの横にいたんですけどね。』



 

 中年の男は中肉中背といったところで、顔は白く疲れており、少しよれよれの古めのスーツを着ていた。赤服の女とスーツの中年は言葉を交わし、彼はスーツを脱ぐ。女性はスーツを受け取り、何か呪文めいた言葉を唱え、相手に触れると彼の体は青白い光に包まれた。

 「どうかしら?」

 「疲れがとれました。有り難うございます。」

 「お礼の言葉はいいから、約束の一万円。」

 男は渋々財布を出し、彼女に一万円を渡す。

 「有り難う。普通なら5万はとるところだけど、その代わり、約束どおりこのスーツも貰っていくわよ。」

 彼女はスーツのポケットをあさり、中のものを全部相手に渡す。

 「もう、なさそうだけど、一度しらべてみて。」

 男は自分のスーツをチェックするが、特に何もなさそうだった。

 彼女は男と離れ、スーツを抱きながら席に座る。

 『役得、役得。』

 美由はその光景をずっと見ていた。

 『悪霊がついているのは、あの人じゃない。あのスーツだ。』

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