日曜日
日曜日になった。
早朝、美由はいつもの様に公園でストレッチをしていた。
赤服の女と犬もいる。
女が美由に話かける。
「しかし、あんた、本当につまらない生活送っているのね。勉強か運動かどっちかしかしてないじゃん。」
美由は相手を刺す様な視線で見つめる。
「いけませんか?」
「いいや。私みたいな、ホームレスになるより、よっぽど健全な選択だと思うよ。」
「退魔師って、大変なんですね。もっと、儲かるものかとばかり。」
「退魔師で儲かっているのは、昔から代々続く組織の一部と、本物の詐欺師だけさ。私の様な野良は食うだけでやっと。」
「私なんて、追いかけてても、お金にはなりませんよ。」
「そうかもね。正直、ここまで何も無く、あんたが何ひとつ面白い事をしないからうんざりしてるわ。」
「だったら、もう、いいじゃないですか?私を追うのをやめて、別の仕事を探せば。」
「あら、有り難うね。でも、心配には及ばないわ。あんたが見て無い処では副業もちゃんとこなしているし。」
「副業ですか?」
「知りたい?」
「いいえ、特には。」
「面白く無い子ねぇえ。」
「すいません。」
「まあ、いいわ、教えてあげる。占いよ。駅前とかでコソコソとね。」
「大丈夫なんですか?勝手にそんな事して。」
「大丈夫じゃないわね。警察やヤクザやクレーマーが結構やってくるわよ。でも私には消える能力があるから。」
「そんな話あまり聞きたく無いんですけどねぇえ。」
「暇だから話の相手にくらいなってよね。聞き手がいない愚痴ほど淋しいものはないわ。これでも、私、当たるって有名になってきているのよ。実際、客足も増えてるし。あんたも3000円で占ってあげようか?」
「結構です。」
「もったいないわねぇえ。特別価格なのに。まあ、本当は私には占いの才能は無いけどね。占いの力で当てているわけじゃなく、相手から得られる情報を大量に引き出して、後は占いの本とかに書いてある事を言って、それに当てはめて適当なことを言っているだけどね。」
「詐欺じゃないですか。」
「あら、大抵の占い師なんて、そんなもんよ。」
桐野は制服を着て、美由の家の前にいた。
美由の母親が玄関先で桐野の相手をしている。
「あら、あなたが美由のお友達?」
「ええ、桐野と申します。」
「珍しいわねぇえ。あの子と一緒に学校に行くために家まで誘いに来た子って中学以来かしら。ごめんなさいねぇえ。美由は、走りに行っていて、今はいないの。もうすぐ帰ってくるとは思うんだけど。」
「桜間さんって、いつも朝、走っているんですか?」
「そうよ。変わった子よね。もう少し、華やかな高校生活を送ればいいものを。」
美由の弟が玄関奥から桐野を覗いた。そして、知らんふりをして、奥へと引きこもる。
「でも、良かったわ。あの子に高校でお友達が出来て、本当に心配してたのよ。そういや、桐野さんって家はどこ?」
「直ぐ近くですよ。」
「もしかして、あそこの鉄筋で出来た白いちょっと大きめの庭のある家の桐野さん?」
「ええ。そうですが。」
そんな会話をしていると、美由と赤服の女と犬が家に帰ってくる。
赤服の女は息を切らせ、汗だくになりながら足を止める。
「みなさい。ここ数日の私の成果を。朝の距離はちゃんと、あなたについていけるようになったわよ。」
「はいはい。偉いですね。」
そういいながら、家をみると、そこには桐野が自分を見ていた。
「あら、桜間さんおはよう。独り言?」
美由は耳をまっかにする。
「桐野さん・・。どうして。」
「あら、友達が一緒に補習を受けに行こうと誘いに来たのに、それは無いわね。」