赤服の女と走る
桐野と須王寺は帰る事にした。
3人は一緒に家の外に出る。
家の前には須王寺を迎えに来た黒塗りの高級外車が止まっており、運転手が立っている。
運転手は頭を下げる。
「お迎えにあがりました麗菜お嬢様。」
「ご苦労さまです。」
須王寺が歩き出すと、運転手は車の扉をあけた。彼女は車に乗り込み扉がしめられる。
「それではみなさん。ご機嫌よう。」
桐野と美由は手を振る
「バイバイ。」
車は走り去っていくと、車の向こう側にいた赤服の女と黒犬が姿を現す。
女は美由を見て「っふ」っと笑っていた。
『何だろう?』
桐野は歩きだし、美由に向かって手を振る。
「じゃあね、桜間さん。走るの頑張って。」
「あ、はい。」
そういって、桐野は去っていった。
美由も走りに行くため、歩きだした。
顔は自然に赤服の女を追っていた。
「あら、お友達ごっこは終わり?」
退魔師の女が話かけてくる。
美由はその言葉を無視して歩きはじめる。
退魔師の女も美由の後を追う。黒い犬も立ち上がり、二人を追った。
「連れないわねぇえ。せっかく、一緒にいるんだから仲良くしましょよ。」
美由は相手の方を向く。
「何ですか?いったい。」
「いやね。あんたが隠しているものを知りたいだけよ。」
「別に何も隠していませんが。」
「あら?そう言っても信じないわよ。」
「すいません。私、走るんでこれで。」
「どうぞ、どうぞ、普段通りになさい。」
美由は走りはじめた。
彼女も犬も走りだす。
『あんな、全身を覆う格好で走れば、熱がこもるし、汗だくになるから大変な事になるような・・・・。』
3分程走り、女は足を止める。
「あんた・。まちなさい。」
女はかなり疲れているようだった。
『やはり・・・・。』
美由は足を止める。
「まだ、走るつもりなの?」
「まだって、まだ、3分ぐらいしか走ってませんよ。私は普段2時間ぐらい走るので。」
「2時間?冗談でしょ?」
「冗談ではないですよ。では、お先に失礼します。」
そう言って、美由は走りはじめた。
「くう・・・。」
彼女は犬を見る。犬も息を「はあはあ」させていた。
退魔師の女は犬の頭を撫でる。
「あんたも限界か・・・。まあ、犬は人間ほど長くは走れないからねぇえ。私もこの格好でなかったら、頑張れるんだろうけど。」
自分の格好がロングのワンピースである事を恨んだ。
だが、自分の趣味で着ている事に気づき、ふと笑いがこみあがってきた。
「あんたは、あの女の家の前で張ってな。私は買出しと仕事さがしてくるよ。」