桐野と須王寺と美由の昼休み
昼休み、桐野がいつものように学園の裏庭にやってくる。
彼女の日課は、昼休み、猫にえさをやる事だった。
でも、今日は猫がいなかった。
彼女はしばらく猫を待つ事にするが、10分まってもこない。
『どうしたのかしら?いつもは直ぐに来るのに・・。でも、ちょっと前にもこういう事はあったから珍しい事ではないよね。でも、事故とかにあってたらどうしよう。』
前にこなかったのは、茶トラのメス猫が暴走した時、暴走の治療のため、衰弱し、しばらく来られなかった時だ。今回来られないのは、この学園周辺を変な女が監視しているからだった。
桐野が色々と考えていると、美由が現れた。
「あのー桐野さん。いつもあなたが、昼休み可愛がってる猫なんですけど。」
「うん。どうしたの?」
「今朝、とある空き地でみたんですけど、ここから随分離れているのでどうしたのかなと。で、今、来てみたら、桐野さんといつものように遊んでなかったので。」
「桜間さん。有り難うね。ところでその空き地って何処かしら?」
「私の家より、ちょっと離れてた処ですけど。」
「へえ。じゃあ。今日、学校が終わったら、そこに連れて行って下さるかしら?」
美由は『しまった。』と、思った。
猫は退魔師の危険を避けるためにあえて、学校から離れた。
それなのに、一番、退魔師からマークされている美由がそこに連れていったら、何の意味もない。
「ええ。場所を教えるので一人でお願いします。」
「あら、あたなの家の家庭訪問もかねて言っているんだけど。」
桐野がその言葉を発すると、後ろから誰かが二人に声をかけてきた。
「あら、それは良いわね。私も参加させて貰おうかしら。」
二人は声がした方を向く。
そこにいたのは、須王寺だった。
「あら、須王寺さんも、桜間さんの家に興味があったの。」
「ええ、もちろんですわ。桐野さん。」
「私一人だと、どうも断られそうなの。須王寺さんが手伝ってくれるなら、桜間さんを説得できるかも。」
「よろしくてよ」
須王寺は素直に桐野に同意した。
美由はこの二人に押し切られて断る自信がない。
「はいはい、わかりました。どうぞ、どうぞ二人ともいらっしゃってください。」
「わかってくれたみたいね。」
「そうね。」
美由はどうしようと思案に暮れた。