ジェミニと赤服の女
昼休みになった。
学園第二派閥の長、近藤 ジェミニは、赤服の退魔師と待ち合わせの場所まで行く。
そこは、魔法少女ガラミンが誕生した、階段の下だった。
ジェミニは直ぐに階段まで来たが、まだ、誰も来ていないようだった。
ジェミニは腕組をしながら、イライラして待つ。
「何しているのかしら、あの人。私を待たせる何て。」
「あら?あなた。私が見えないの?」
そう言って、退魔師の女は存在を強め、ジェミニの目の前に姿を現す。
「私みたいな、目立つ格好している人が学園内にいると問題になると思ったから、見え無いようにしてたんだけど。」
「あら、失礼。そういった事だったの。」
「さっきトイレで話した時は、さっき、消えてたくらいでも見えてたのに。今は見えない様ね。あんた最近魔法でも使った?」
「魔法を使うと、見える様になるの?」
「一時的だけど、見える様になる人が結構いるわね。まあ魔法を使っても見えない人の方が多いけどね。魔法を使ってどれくらいの時間で見えるのかは、人それぞれだし。」
「へぇえ。」
「昨日、メリーが感じた強い魔法の発動はあんたか?」
「メリー?」
ジェミニは故意に魔法を使った事についてスルーする。
「ああ、まだ言ってなかったか。メリー姿を現しなさい。」
彼女がそう言うと、黒い大きな犬が現れた。
ジェミニは凶暴そうな犬が現れて、少し心の中で引いたが、顔には出さない。
「この子がメリー。退魔の訓練を受けた特殊な犬で私のパートナーよ。よろしく。」
「へえ。こんにちは、メリー」
ジェミニは無理に笑顔を作り、メリーに微笑みかける。
「メリー消えなさい。」
メリーは消えた。
赤服の女はジェミニを見る。
「で、あんたが、昨日、この学校で魔法を使ったの?」
「それについては、今は回答を避けておくわ。」
「なるほどね。でも、メリーがあの距離で感知して私に知らせる程の魔力をあんたが使える様にはみえないんだけどな。」
「それについては、ヒントだけあげるわ。1年の成美矢朋という子を調べなさい。」
「なるみや とも?」
「この前まで、あんたが調べてる女とべったりだった子よ。最近は仲良くしているのは見ないけど。」
「ああ、あのちびっ子か。なるほどな。そいつもかなり良い目をしてたな。」
ジェミニは考える。
『この女は桜間さんも見える目を持っているといっていた。そして、あのちびっ子も見えるという・・。どういう事なのかしら?』
「ねぇえ。あの子達って、どれくらい見えてるの?」
「さあなぁあ。知り合ってまだ4時間ぐらいしか立ってないからなぁあ。多分、私よりはだいぶ下だとは思うが。」
「それってどれくらいなの?」
「そうだなぁあ。犬とか猫が長生きすると、極たまにだが、化け物化する事がある。」
「化け物化?」
「化け物化するとだな。その土地で人間が話している言葉をしゃべれたり、存在を薄くできたりする。」
「化け物化って、大きくなって如何にも凶悪な姿に変貌するんじゃないの?」
「ああ、そういうやつもたまにはいるが、大抵は、元の姿のままだ。私等の間ではそいつらを『モドキ』と呼んでいる。」
「・・・・。」
「こいつらは、普通の人間には見えないぐらいには存在が薄いが、見える目をもっていればほとんど消えているからどうか分からないぐらいには見える。まあ、最初会った時のあんただと、うっすらとした色の塊があるぐらいにしか見えないがな。ようするにあの時のお前さんより、ちょい目がいいくらいじゃないかな?いかんせん天然の様だしな。」
「天然って何かしら?」
「見える目を持っていても、私の様に見る訓練を受けて無いヤツのことさ。」
「へぇえ。」
ジェミニはそう答えた後、難しい顔をする。
ふと、彼女の脳裏に、夜、美由と傷だらけの黒猫が一緒に歩いていた姿を思い出していた。
『あのときは、あの本を使っていた時。私は多分、見えないものが見えていた。彼女は猫など知らないとごまかしていたけど、あれが化け物だと考えると、彼女が否定した理由も納得が行く。』
「どうかしたの?」
「いいえ。処で、桜間さんについて他に情報は無いのかしら?」
「あって、4時間しか立ってないのだぞ。そんなもんだ。」
「そう。ひとまず、あなたとは、もう少し縁を持っていた方が良さそうね。」
そういって、封筒を取り出す。
「今回の礼よ。」
彼女は何の躊躇もなく、その封筒を受け取り、中身を確認する。10万ぐらい入っていた。
「もし、彼女について何かわかったら、私に教えて。」
そういって、ジェミニは立ち去る。
「ああ、一つ言っておくけど、次はそんなに貰えると思わないでね。それと、私から金をせびろうとしない方がいいわよ。あなたの身のためにね。」
「了解した。」