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魔法少女ガラミン  作者: からっかす
1話 魔法少女誕生
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朋の嘘

 朋は教室に戻ってくる。

 教室の扉を開け、中に入りるなり、先生に向かい、大きく頭を下げた。

 「先生。すいません。昼休み、3年の教室に行ったら、突然、人が倒れて、救急車で運ばれるの見た後、ちょっと、歩いていたら、気分が優れなくなったので、トイレで気分を整えていたら、遅れました。すいません。」

 朋はまた、頭を大きく下げた。

 「はいはい、わかった。わかった。とにかく席に座れ。」

 「ほんと、すいませんでした。」

 朋は、もう一回、大きく頭を下げ、自分の席についた。

 授業は何事も無かったかの様に進む。

 朋はてんやわんやで、黒板にビッシリ書かれた文字を書き写す。朋は文字を書くのが早い方ではない。慌てに慌てて、先生の話など聞いていない。

 先生は黒板消しを握り、一気に黒板の半分を消す。

 『うー。間に合わなかったよー。後で、ノート借りないと。』




 美由は何事も無かった様に、授業を受けていた。

 朋と違い、美由は筆記速度が速い。黒板の文字を難なく写し取っていた。



 5時間目の授業が終わり、休み時間になった。

 職員室では、学校のすみで起こった破裂音については、特に異常を発見できなかったので、学校の外で何かの作業中に出た音として処理されていた。


 授業が終わるとすぐに、朋と仲の良い3人が朋の席に集まって来る。

 「ねぇえねぇえ。桜間先輩にハンカチ返しにいったんでしょ。どうだった?」

 「ハンカチは返せたよ。」

 「で、それで?」

 「それで?って、それだけ。」

 「それだけって。」

 「だって、その後、すぐに3年生が倒れて、桜間先輩、須王寺(すのうじ)先輩と一緒に、その人を介抱(かいほう)しに行ったから。」

 「ああぁあ。朋、ついてない。」

 「二人が介抱しているのを見て、救急車で運ばれる処まで見てたけど、その後、話しかけられるきっかけが無かったから。そしたら、ちょっと気分が悪くなって。」

 「そして、トイレで泣いてたら、授業に遅れたと。」

 「泣いてないよー。」

 「はいはい、そういう事にしとこう。朋が桜間先輩をそんなに思っていたとは。」

 「あうー。そんなんじゃないよー。」

 「気にしない、気にしない。学校が終わったら、パーっと遊ぼうじゃない。」

 朋はその言葉に「っは」とするが、一瞬の間を置き

 「ごめん、私、家の用事があって、抜け出せそうにないんだ。」

 「そっか、そっか、朋の慰め会は後日という事で」

 「それよりーノート貸して。私、半分しか黒板、書き写せなくって。」

 「お、いいよ。」

 鈴木あずさが自分の席からノートをもってきてくれた。

 「ありがとう。」

 「いえいえ、どういたしまして。」




 6時間目が終わり、皆が席を立ち、帰りの準備をはじめる。

 「パタパタパタ」と、誰かが走る音が、廊下から聞こえてくる。その音が止まったかと思うと、物凄い勢いで、教室の扉が開いた。

 「すいません。成美矢(なるみや) (とも)さんは、まだ、いますか?」

 そう、大声で叫んだのは芹ヶ野(せりがの) 加奈(かな)だった。

 彼女は大声で叫んだ後、激しく、息を切らせていた。

 朋は彼女が出てきた扉の方を振り返り、慌てて、彼女の元に走り寄る。

 「加奈ちゃんどうしたの?そんなに、息を切らせて。」

 加奈は朋の両肩をガッしりと掴み、不適な笑みを浮かべて、朋と顔をあわせる。

 「き、聞いたわよ。持久走大会の時に美由先輩に借りた、ハンカチを昼休みに返しに行って、その時、須王寺(すのうじ)おねぇえ様が立ち会ったそうじゃない。」

 「う、うん。そうだけど」

 「その後、あなた、美由先輩に頭を()でられた、そうね?」

 「うん。()でられたよ。」

 「その後、すぐに、3年の先輩が貧血で倒れて、お二人が介抱した。間違い無いわね?」

 「う、うん。その通りだけど。」

 「詳しく、そこをもっと詳しく聞きたいの。ちょっと来て。」

 加奈は朋の手を物凄い握力で握り、朋を引きずる様にして廊下の隅へと連れて行った。

 朋は加奈の質問攻めに遭う。朋の友達3人は、聞き耳をたてている。

 猛烈な質問攻めを行う、加奈に朋の頭の中はグルグル回っていた。答えられる部分は答え。答えられないところは、知らない、わからないで、何とか切り抜けた。

  芹ヶ野(せりがの) 加奈(かな)は、実際の処、朋には興味は無かった。

 彼女が興味があるのは、桜間(さくらま) 美由(みゆ)が、王子様的な優しさを、「可愛らしい後輩」と「貧血で倒れた同級生」に対して、どう発揮したか?という事と、もうひとつは、美由が学園のおねぇえ様として急激に株を上げており、他のおねぇえ様派閥との関係だった。

 よって、朋の、少々の嘘に気づくはずが無なかった。

 「加奈ちゃん。随分(ずいぶん)(うれ)しそうだね。」

 「今の派閥は、昔からの派閥を引き継いでいるから、どうしても気品に溢れるお嬢様タイプの人たちばかりだけど、ここに来て、王子様タイプのおねぇえ様の登場よ。ワクワクしない方がどうかしてるわ。朋ちゃん、ありがとうね。私は尾ひれをつけて、学校中に学園のニューヒロインの登場を伝えなくちゃならない指名があるから、それじゃあねぇ。」

 そう言って、加奈は去っていく。

 朋は『 迷惑じゃないのかな? 』と思ったが、言い出せずにいた。

 加奈が去ると聞き耳を立てていた、朋の友達三人が走りよって来る。

 「おお、朋。何で桜間先輩に頭を()でられた事を隠していた。」

 「別に隠してないよー。ただ、言いそびれただけで。」

 「そんな萌える展開を隠していたとは、こぉおの、ちびっ子め。」

 そう言って。田中 佐和(さわ)が朋を抱きしめる。佐和(さわ)は美由より身長が高いく、朋はクラス(いち)身長が小さい。朋の顔は佐和(さわ)の豊満な胸に埋まる。

 「あうー。苦しいよー。」

 佐藤 絵里は、佐和(さわ)の胸に沈む朋の頭を()でる。

 「よしよし、不幸な事件があって桜間先輩と仲良くはなれなかったけど、頭を撫でられただけでもめっけもんだって。」

 「うー。」

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