美由とクロは退魔師について語る
美術の時間が終わり、美由は別の校舎にある自分の教室に戻ろうと中庭を歩いていた。
そこに、尻尾をプラプラさせながら歩く、傷だらけの猫が美由に近づいて来て、一緒にならんで歩きだす。
「何です?黒猫さん。」
「魔法少女様。退魔師の女に絡まれた様で。」
「ええ、迷惑をしています。てか、珍しいですね。あなたが学校に堂々と来るなんて。」
「堂々とはしてません。チャンスが今しかなかったもんで。」
「チャンス?」
「あの退魔師の女が、さっき、学校から離れたので、その隙をついて来たわけです。」
「何か私に用でも?」
「ええ。昨日の夜、茶トラのメス猫があの女に襲われました。まあ、何とか逃げ切りましたが、どうも何もしていない化け物を捕らえて売りさばこうとしているみたいで。」
「それは、酷いですね。でも、私が『やめて』と言って聞くタイプとも思えませんよ。」
「そんな事は言ってません。どうも、あなたに興味をもたれた様なので、彼女が諦めるまで頑張って相手をしてて欲しいのですよ。」
「私、イヤですよ。」
「彼女はどうもお金が無いようで、食うために安易に稼げる弱い化け物狩りに走っているようなんですよ。このままでは、我々の生活が危ういので、どうか頼みます。」
「むー。どうせ、断っても、向こうはこっちに勝手に寄って来ますからねぇえ。実際私には選択肢は無いんでしょうけどね。」
「良くお分かりで。で、多分、あなたが彼女の前で存在を薄くするとか、魔法少女になるとか、魔法で治療するとかいうポカをするとか、または、我々化け物の情報うっかり口を滑らして話さない限りは、大丈夫だとは思います。そういうワケで、注意と口止めに来たわけですよ。」
「自身無いなぁあ。魔法少女関連は良いとしても、化け物の話については、カマをかけられたら、簡単に話してしまいそうで。」
「頑張ってください。それとですね。茶トラのメス猫についてですが、退魔師がどうもここら辺にしばらく留まるつもりみたいなので、その間、学園には来させません。彼女と仲の良い、あなたの友達がいますよね?その方が心配しているようでしたら、前にボスと会った空き地で見たと伝えておいてください。」
「はい、分かりました。」
「ああ、大事な事を言うのを忘れてました。」
「なんでしょう?」
「今回は、あなたに助けを求められても、我々は手を貸しません。」
「私は手を貸すのにですか?」
「当然でしょ。相手は退魔師です。相手に下手に傷つけたら、我々を駆逐するために動く連中が必ず出てきます。我々は全滅を避けるために仕方が無いのです。私一人の問題ですめば、手を貸しても構わないのですが。そういうワケにもいかないので。」
「仕方ないですよねぇえ。」
「それと同じ理由で、蛙主様やウサギ主様に直接、会うのは避けた方がいいですよ。」
「そうですねぇえ。あの人達を巻き込むわけにはいきませんから。」
『でも、一応伝えておくかな。カエルのメッセージ程度なら大丈夫でしょ。』
「では私はこれで。」
そう言って、猫は去っていく。
『あのおねぇえさんは、今は学校にはいないというし、今のうちに蛙主に来るなと言っておくか・・。』
美由は蛙をみつけ、メッセージを送った。
『そういやあ。彼女、朋ちゃんにも目をつけていたんだよな。どうしよう・・・。』